ブリューヌ・ジスタート転覆計画編
第14話『還らぬ者への鎮魂歌〜新たな戦乱を紡ぐ前奏曲』
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た」
否定できない。まぎれもない事実なのだから。あの時の自分は『何かにとりつかれていた』のだろうか?
「まして、処刑されていたはずの人間が、実は生きていました。そんな人間を警戒するのは当然でしょう?」
「そうだな」
凱は否定しなかった。これからは互いの信頼が今後を左右に傾くシーソーゲームとなる。ジェラールの質問は至極当たり前だったからだ。
「誤解する前に一つ、言わせてくれ」
凱は自分の意志を示す。皆は少し背筋を正す。
「俺は誰の敵でも味方でもない。勇者――目の前に映る全てを救う者。もし、誰かが助けを求めているならば……その必要があるのなら、俺は相手が誰であろうと、何があろうと、――助けに行く――」
その言葉に、全員の瞳に僅かな光が宿る。
「じゃあ……我々が助けを求めた時は……ガイ殿は救ってくださるのですか?」
マスハスは緊張を帯びた口調で問う。
「全身全霊を以て。微力を尽くすまでです。マスハス卿……目の前に映る全てを救う為に」
「救う……目の前に映る全てを?」
リムは静かにつぶやいた。
(赤い髪の神剣の騎士……セシリー=キャンベル。君なら同じことを言うはずだ)
俺も君も、つまるところ頭が悪い。故に、御国事情の『命令』より、単純明快な『理由』でしか、その力を振るえない。
凱は信じたい。この場にいる全員、銀の流星の集いし丘こそが、この今こそが、本当の救いだと――
その集いの中に……勇者が動ける『理由』がある、ということを――
「話を戻すようで悪いが……その力があれば、銀の逆星軍を蹴散らすことも容易ではないのかな?」
オージェ子爵がそういうと、凱は首を横に振る。
「俺は思うんです。無責任な考えでたやすく竜具を振るうことが、みんなの望もうとする未来をもたらすはずがない――と」
優しい口調に確かな意思、凱の言葉にそれらの両方が含まれていた。オージェ子爵は一応の納得をした。
凱の持論に過ぎないが、リムには理解できていた。それは、凱だけではなく、戦姫全員が共通する認識だと。
確かに、見境なく竜の爪を振るえば、敵は全滅できるかもしれない。ティグル達を救出できるかもしれない。だが、それではだめだ。
凱も先ほど言ったばかりではないか。『損耗率』という形で。
超常の力を振るうことが常用化する事……人や国、大地の『損害率』の許容範囲を超える未来は『勝利』でも『敗北』でもない。両者にもたらす確実な『滅亡』しかないと――
「ガイ殿……最後に一つ、教えてくれぬか?」
マスハス卿の追問に、凱は瞳を向けなおす。
「なぜ、我々を助けたのかな?」
誰の敵でも味方でもない。それは、希望であり、脅威になり得る至極当たり前な発想からくる質問だった。
と
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