戻れぬ道を今も生きる
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を歩いた。アキバはオタクの街だ。にわかの街じゃないんだ」
もう一度爆発音がする。それは周囲にきらきらとした粉末を撒き散らした。
その粉末はエロゲを瞬く間に粉々にしていく。
本郷「なんだと……これは」
そう、オタク力の高いものを粉々にできる粉末の存在であった。
明「そうか、オタクを……」
すべてのものがオタクで居続けることはできないのだ。
アキバでテロが行われた。この情報は瞬く間にネットを駆け巡る。
本郷のラインにもいくらか連絡が入る。しかし、それを観ている余裕はない。
近くのアキバ神社で座り込む本郷。
中央通りの喧騒とは違い、大きな猫が本郷の足元で昼寝している。
明「オタクが……オタクを攻撃するだと……」
そう、彼の時代は口撃はあってもリアルに同胞に危害を加えるものなどいなかった。
明「なぜ……」
本郷には分からなかった。
萩音「……それは、起こる必然だったんです」
足元にいる猫の首元を触る、未来からきた女、宮園 萩音の姿がそこにあった。
明「猫触る前に声かけろよ!」
萩音「あ、つい……かわいくて、すいません」
顔を赤らめながらも猫を抱えて満面の笑みを浮かべる。
明「いや、まあいい。それより――」
萩音「本郷さんが遭遇した人、彼が未来のジョンブラウンになりました」
明「奴隷解放運動の人間か」
萩音「よくご存知で、”端末操作” 歴史 ジョンブラウン」
空間に映し出される、ひげ面のおっさんの姿がそこにあった。
明「あいつは……オタクという感じじゃなかった」
萩音「未来では弱者救済の革命家です」
彼の名前は三木 俊輔(みき しゅんすけ)
未来では少子化をなくす、エンゲージという制度を作った政策者であり、
政府官僚である。容姿ではなく、実際の実力さえあれば誰でも優秀な遺伝子を持つものと結婚できる仕組みを作った。
明「…………」
萩音「それによって、恋愛というものを大勢の人々は知らずに育っています」
明「なら、エロゲは」
萩音「とっくの昔になくなって、それこそ恋愛物なんてものは過去の遺物です。すいません……」
本郷は愕然とした気持ちになった。
明「オタクたちは?」
萩音「もう存在しないでしょう。いたとしても確認されないくらい極少数……」
未来ではオタクは消える。それも本当の意味で。
明「……俺達のせいなのか」
二次元こそ至高、三次元はクソだ。
この言葉は本当になった。
萩音「いえ、それこそ高齢化社会になんの対策も取れなかった政治の所為です」
苦笑いする彼女の言葉に、本郷は少し安堵する。
明「それで……俺にどうしてほしいんだ?」
萩音「……あなたは私たちの世界の人間ではない。だから――」
風が境内の木を揺らし、萩音の胸の中で寝ていた猫はどこかへ立ち去っていく
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