11. 紳士と淑女と親友と妖怪
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事だよ!!」
フと、隼鷹の左手が視界に入った。あの、キラキラと輝く指輪が俺の視界に飛び込んできて、俺の耳に、あの時と変わらない、星がこぼれる音が聞こえた。
「隼鷹」
「ん?」
「……やっは綺麗だなぁ」
「……バッ……ちょ……何言ってんの!?」
顔を真っ赤にしてそう狼狽えて照れる隼鷹の髪が、揺れ動く度にキラキラと音を立てていた。あの時と変わらず、隼鷹の輝きはくすまない。
「それはそうと提督! 球磨が……」
「球磨がどうした?」
「なんか正門のところに不審人物見つけたらしくて、ぶん殴って成敗したあと執務室に連れてくるって息巻いてたよ?」
「……!?」
「今日って確か……」
新しい美容師……いや床屋か……いやどっちでもいいか……がそろそろ到着する時間のはずだ。まずい……球磨は相手のことを拘束してぶん殴るつもりだ。早く止めないと。
「球磨は!?」
「今ちょうど正門に行ったとこ!!」
「分かった! 俺も行く!!」
一刻も早く球磨を止めなければ。あいつはとぼけた顔をしているが、実は意外と血の気が多い。早く止めないと、艦娘に一般人がぶん殴られるというとんでもない事態に陥る……!!
執務室の出入り口のところにいる隼鷹と視線を重ねた。隼鷹はこれから哨戒任務に出る。その隼鷹と俺は、晩餐会の帰り道のときのように左手同士を重ねた。
「隼鷹」
「ん?」
「……気をつけて」
「大丈夫だよ。あんたの淑女の隼鷹さんは、ちゃんとあんたのもとに戻ってくるから」
「そだな」
「だからさ。安心しなって。それよりも球磨、早く止めなきゃ」
隼鷹のこの言葉で、俺は床屋の命が風前の灯であることを思い出した。こんなところで自分の妻といちゃついてる暇なんてない。早く床屋の命を助けに行かなければ。
「……ハッ!? そうだ! 行ってくる!!」
「はいよー」
俺は暴走する球磨を止めるべく、球磨が向かったという正門に向かうために執務室を走り出た。
しばらく走ったところで、後ろを振り返る。俺だけの淑女が……俺が惚れた隼鷹が、笑顔で俺を見送っていた。
「隼鷹!」
「んー?」
――君は意外と本音が口から漏れやすい
「大好きだ! 愛してる!!」
「バッ……ちょ……いきなりなに言ってんの! 早く行って!!」
俺の口から漏れてしまった本音を聞いた隼鷹は、顔を真っ赤にして指輪が光る左手で、シッシッと俺を追い払う。ごめんな隼鷹。店主の言うとおり、俺は口から本音がボロボロ漏れやすいみたいだ。これからもお前をきっと困らせるだろうな。こんな風に。
でも。
「ったく……タッハッハッ……」
ほっぺたを真っ赤に染め、そう苦笑う俺だけの淑女からは、キラキラという星がこぼれる
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