10. 酒と星
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ハ」
満足そうな笑みを浮かべながら獺祭を再びおちょこに注ぎ、豚汁をすすりながら卵焼きを頬張っていた隼鷹は、本当にいつもどおりの隼鷹だった。
「やっぱ料理うまいね提督ー」
「ありがと。先生がいいから」
「あたしも一応、同じ先生に学んだはずなんだけどなぁ……タッハッハッ……」
そう言いながら頭をポリポリとかき、恥ずかしそうな苦笑いを浮かべる隼鷹を見て、俺は隼鷹に夕食を頼んだ時のことを思い出した。
「でも隼鷹、別にヘタってわけじゃないだろ?」
「そお?」
「ただ、作る料理がいちいち酒のツマミになっちゃうだけで」
「タッハッハッ……やっぱあたしが酒飲みだからかねぇ……?」
そう。隼鷹が作る料理は、なぜかいちいち酒のツマミに変貌していく。それはそれでうまいしご飯のおかずにもなるから、いいといえばいいんだが……
「やっぱ晩ご飯としての料理は、提督には叶わないよ」
「そうか? やっぱ鳳翔のおかげか?」
「うん。もう立派な鎮守府のオカンだね」
「なんだそりゃ……でも納得しちゃう自分がイヤだ……」
他愛無い会話が弾む。しばらくそうして話しながら獺祭を楽しんだ頃。
「ふぃ〜……」
「ん〜……ちょっと回った……かな? 提督は?」
「酔ってはないな」
なんせ酔っていられる余裕がないからな今。
隼鷹のほっぺたがだいぶ赤くなってきた。おちょこを置き頬杖をついて外を眺める隼鷹は、妙に艶っぽく見えた。
「ねぇ提督……」
「ん?」
「昼間、トノサマ洋装店行ったでしょ?」
「行ったな」
まさかその時の話をむし返すつもりじゃないだろうな……!? 俺の方から言う前にそっちから話を降ってくるつもりじゃないだろうな!? と俺は妙な不安感に襲われたわけだが……隼鷹が話したい内容は、どうやらそれではないらしい。
「あの時さ、提督……店主のコーヒー、美味しくないって言ってたよね」
「“好きじゃない”だけどな。美味しいとは思ったよ。でも好きじゃない」
「それ……なんでかなーって思って」
「理由なんてない。俺は好きではない。ただそれだけのことだ」
……ウソだけど。本当はお前が淹れたコーヒーと比べたからだけど。
「逆に聞くけど、お前もパンプキンパイはうまくないって言ってたよな?」
「うまくないなんて言ってはないけど、もっとうまいパイはあるとは思ったね」
「なんでだよ? あんなうまいパンプキンパイ、そうないだろ?」
「んー……」
俺の指摘に対し、困ったように唸りながらも艷やかな笑みを浮かべたまま、再び外の景色を眺める隼鷹。俺は、窓に映る隼鷹の顔を見た。
「……」
言おうか言うまいか……そんな二択のどちらを選ぶか迷ってる……でもそれが楽しい……そう言いた
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