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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十七話 内乱終結後(その1)
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詰め合った。
「渡すか?」
「さて……」
渡してもルビンスキーを捕らえられなければ、同盟はルビンスキーは既に帝国が捕らえたと言うだろう。その上でフェザーン返還を引き伸ばしていると。となるとルパートを同盟に渡す事は余り意味が無い。そして同盟がルビンスキーを捕らえる可能性はかなり低いだろう……。
「意味は無いか……」
「多分……」
侯も俺と同じ事を考えたようだ。ルビンスキーの捕縛は帝国と同盟の間で水掛け論になる可能性がある。場合によっては同盟は帝国への不信を理由に兵を退くだろう。それは余り面白くない。
「渡したほうが得策か……、いやフェザーンは反って混乱するかもしれんの」
「そうですね、ルビンスキーが掻き回しに来るでしょう。出来れば後一年は帝国においておくべきだと思います。」
俺の言葉にリヒテンラーデ侯が忌々しそうに頷いた。
簡単には兵は退けないだろう。喧嘩別れでは帝国がフェザーンへ進駐する口実を与えかねない。フェザーンの中立を確立した上での撤兵、それが同盟の願いのはずだ。
元々帝国がルパートの身柄を押さえたのはフェザーンに彼を置いておけばルビンスキーがルパートを利用してフェザーンを混乱させるのではないかと思ったからだ。帝国は内乱の最中だ、不必要な混乱は避けたい。
そして内乱終結後もその状況は変わらない。ある程度国内が安定するまで外征は出来ないのだ。つまりフェザーン、イゼルローンどちらも静寂である事が望ましい。ルパートを押さえたのはルビンスキー捕縛のためではない、フェザーン安定のためだ。オーディンならルパートは自由に動けない、フェザーンのルビンスキーもだ。危険性は低い。
「ルビンスキーの捕縛よりもフェザーンを安定させろと言うかの? 先ずはそちらを優先させろと」
「いささか苦しいですね、亡命者が小粒です」
「ランズベルク伯とシャイド男爵か、ランズベルク伯は誘拐事件の主犯、シャイド男爵はブラウンシュバイク公の甥、十分大物じゃ、危険人物じゃろう」
ランズベルク伯が危険人物? 失笑仕掛かったが、途中で顔が強張った。操り方次第では十分に危険人物だ。それは原作でもこの世界でも証明されている。しかし二人ではいささか駒不足ではある。
「捕虜をフェザーンに追放しますか」
「捕虜か?」
「はい」
リヒテンラーデ侯は少し考える表情をした。
「フェザーンで反帝国活動を起させるということじゃの」
「はい、集まればたちまち不平不満を言い始めるでしょう」
捕虜の主だったもの、ラーゲル大将、ノルデン少将、ラートブルフ男爵、シェッツラー子爵、これらをフェザーンに追放する。連中、あっという間に不平不満を言い始めるだろう。となるとルビンスキーが動く可能性も有るか、ただの謀議ではすまなくなるな。
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