暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
三十話 Limit speed「×1」
[7/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
た』
「(気がつかれれちゃった、か)」
クラナの目つきが変わったのを見て、クレヴァーも何かを察したのだろう。彼の雰囲気に警戒が満ちて行く。互いの間にじりじりと緊張感が張り詰めて行く中、アルが聞いた。

『では、あれはやはり』
『うん、クレヴァーが俺より早くなってたんじゃない。“俺が遅くさせられてた”んだ』
初めに感じた違和感に気が付かなかったのは、ある意味で無理もない事だった。何故ならそれは本来、「試合」というリング上で最も集中するべき事象の、外側にある事象、すなわち「観客席の声」だったからだ。

クラナの「加速魔法」は、その原理上、クラナ自身の「運動速度」「思考速度」は高速化することが出来ても、それ以外、すなわち、クラナの加速の埒外において行われる、クラナ以外の「物理現象」のスピードは、一切高速化することが出来ない。
そのため、本来加速中は、クラナが聞き取るあらゆる音は、低速になることで、引き伸ばされた音楽のように、波の感覚が広い、低音の音で聴覚に認識されるのだ。

しかし、先ほどクラナが立ち上がった時、試合再開と共に上がった観客席の声が、「高く」聞こえたのである。音が高く聞こえるのは、クラナの認識の中でその音が高速になっているときだ。認識できる音波の幅が短い為、音は通常よりも早く、高く聞こえてしまう。音声を早送りするのと同じだ。そしてこれと同じことが、先ほど、ノーヴェが声を上げた時にも起きた。ノーヴェが何を言ったのか、クラナには分からなかった、分かったのは唇の動きからノーヴェが何かを言ったことと、一瞬だけ甲高い何かの音が聞こえたことだけだ。

そして極めつけは、ローリング回避である。ローリングによる回避は、本来のクラナならめったなことがないかぎり行わない回避方法だ。体制が明らかに崩れる上に、相手を視界から一瞬でも消してしまうし、下手をすれば体のどこかを変に打つ可能性もある、しかし最大の理由は、その動作上、ローリングによる回避が物理法則に乗っ取ったものであるためだ。
本来、クラナは加速中にローリングの回避を行う時、相当の力で地面を蹴って思い切り推進力を掛けた回転をしなければならない。というのも、物理法則は等速であるため、ローリングする際のクラナの落下に関係する動きは、クラナが普段思うよりも大分遅くなるからだ。同じ理由で、クラナはあまり地に足のつかない空中戦を好まない。加速魔法の真価は、あくまで足が使えて初めて成立するのである。

しかしその認識と逆の事が、先ほどクラナの身体には起こった。ローリングしたときの回転速度が、クラナの予想をはるかに上回って早くなったのだ。正直なところ体を打ち付けることなく、しっかりと着地できたのは半ば奇跡と言っていい。つまり、物理法則の方がクラナの認識よりも高速であるという事。そこから導き出される結
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ