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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
三十話 Limit speed「×1」
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、跡になって自分の歩く道に跡を作る。その歩いてきた足跡を、試しても良いと言われた、挑戦しても良いと言われた。どうしようもなく弱い、歩みだせない自分の背を、初めて、押してもらった。それがどこまでも嬉しくてこぼれた涙は同時に、決意の滴だった。
誰もしたことが無いのなら、前例がないというのなら、自分がその前例になろう。
自らの持てるすべてを持って、誰かが決めつける「常識」を打ち破ってやろう。その為には……
────
「……予定通り」
自分の考えに考え抜いた策がはまった事で、クレヴァーは小さく微笑んだ。彼にとっては当然のように、それは演技だった。頭の内は、普段から頭の回転が速いと自負している自分でも驚くようなスピードで、目の前の少年が起き上がった後の展開を考えている。
この日の為に、クレヴァーはクラナに対するあらゆる情報を調べ、集め、覚え、予想した。彼の戦技、魔法、技術、スタイル、家族構成や分かる限りの趣味嗜好、戦歴、トレーニングに至るまで、本当にあらゆる事をだ。
すべては、クラナ・ディリフス・タカマチという圧倒的な実力を持つ選手に、勝つために。
「(この試合に勝って、証明する……無理なんかじゃない、魔法戦技の世界は、頭脳戦でも勝ち上がれる)」
あれから徹底的に自分の持つ数少ない戦闘のスキルを精査して、クレヴァーはそう結論をつけていた。元々、クレヴァーは知識はあってもけして魔法戦の能力が高いわけではない。魔力の瞬間最大出力はけして高いとは言えないし、使いこなせる術式もどちらかと言うと実際のダメージが狙えるものよりも妨害や支援に使うものばかりで、それをメインに戦闘するものが居るかと言われたら少ないと言わざるを得ない。
だがそうであっても、それを補う手段はある、勝てる。と彼は考えていた。戦い方さえ伴っていれば……
────
[6……7……]
「…………」
[あ、相棒?大丈夫ですか?]
「あ、うん……やっぱり、そうそう簡単じゃないなって」
言いながら、クラナは一つ息を吐いて立ち上がる。ちょうど、カウント9ぎりぎりの時間だ。
「[クラナ選手、カウントを九まで待っての立ち上がり。先制攻撃のダメージは果たして伝説に通じているのか!]」
「(通じてるって、人間ですよオレ)」
実況者の煽りに苦笑しながら、クラナは自らの状態を確認する。残りLIFE5770、ボディに18%、不意を打たれたためもあって、綺麗に直撃をもらってしまったのは痛かった。とはいえ、まだケリが付く、というのには少ないダメージだ。ボディダメージは蓄積すると動きを阻害するため問題だが、現状は無視しても良い程度のダメージでしかない。問題は……
「(あのスピード、こっちの加速を超えてくる速さを生み出す魔法が、向こうにはあったって事なのか……?)」
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