暁 〜小説投稿サイト〜
フロンティアを駆け抜けて
いざ、王の間へ
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
をふーふーするニャース。ジャックは手を叩いて大笑いだ。
 
「楽しそうね、ジャックさん」

 部屋に入ったジェムは、声をかける。ジャックは振り向いて、画面には一切の未練を持たずに電源を切った。自動的に雰囲気を乱すディスプレイは収納され、部屋は王と王の財宝が眠る部屋と化した。

「ずっと待ってるのは暇だって言ったら、緑眼の子が用意してくれたんだ。あの子も気が利くようになったね」

 緑眼の子とはダイバの父親、エメラルドのことだ。フロンティアの主催者であり、ホウエン地方全体に名が轟く彼もジャックにとっては子供扱いである。さっきまでアニメを見て笑っていたのと同一人物とは思えないが、そういう老人と子供の両方の性質を持つ人である。
しかしジェムとしては、自分が挑戦しに来たのに反対方向を向きアニメを楽しんでいたのはなんとなく釈然としない。ちょっぴり拗ねたように言ってみる。

「邪魔しちゃったわね。アニメが終わるまで、待ってた方がよかったかしら?」
「まさか。所詮はヒマつぶしだよ。挑戦者が――ましてや僕の弟子がここまでやってきたんだ。もう待ち切れないくらいだったよ」

 ジャックの表情が変わる。いつでも楽しそうな表情をしているジャックだが、それは半ば演技であることをジェムは知っている。彼の退屈を本当の意味で癒せるのは、ポケモンバトルだけ。

「ジェム。君にはおくりび山でポケモンバトルの基本を教えた。あの時既に、君はトレーナーとしても十分な実力を持っていたさ。だけど、強者の集まるこの地では通用しないことも多かっただろう?」
「……そうね。もう大変な目に合ったわ。ジャックさんがいなかったら危なかったし、私って弱いなあって思ったよ」

 ブレーンや主催者は勿論、寡黙で容赦を知らない少年。自分の地位を利用するため他人を意のままに操ろうとする男。弱者を許さない誇り高きドラゴン使いの女性に、生きた人間である自分を、人形のように愛でようとする少女。皆が基本的なことしか知らない自分が弱弱しく思えるほど己の信念、己のポケモンバトルを持っていた。

「だけど、それでへこたれるほど君の受け継いだ遺伝子は弱くない。ここまで来たことがそれを証明しているしね」
「うん、いっぱい考えて……今は少しずつ、お父様に近づけてる気がする」

 お父様、か。そうジャックは小さく呟いた。ジェムには、聞こえていない。

「今はまだそれでもいいのかもしれないね。少なくとも、彼に救われた僕が否定することじゃない。さあ、それじゃあ見せてもらうよ。ポケモンだけじゃない、君の進化と真価を」
「本気、出してくれるのよね?」
「当然だよ、やっとこの時が来たんだ。君のお父さんが約束を守れているかどうか、確かめなきゃね」

 ジャックは間
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ