いざ、王の間へ
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で氷を溶かす。体の霜が落ち、目をぱちくりさせて意識を戻したマリルリを抱きしめてジェムはようやく安堵する。ジェムの体が、膝から崩れ落ちてへたりこんだ。
「あれ……おかしい、な」
体に力を入れることが出来ない。今までの疲労に、急速な体温の低下。そして予想外の仲間の危機とメガシンカによる体力の消費。考えてみれば当たり前だ。
あまりよくない状況だが、もう冷気は消えた。バトルピラミッドには時間制限や立ち止まることを禁止するルールはないし、ここならトレーナーがやってきてバトルを仕掛けて来ることもない。少しここで休んだ方がいいだろうと前向きにとらえるジェム。
マリルリ自身を回復させる意味でも、『アクアリング』を使ってもらう。自己回復の技と解釈されやすい技だが、水のリングの中に入ってさえいれば他者も恩恵は受けられる。
「昔はよく、こうしてもらってたっけ。懐かしいね」
まだジェムがポケモンを使役出来ないくらい幼かったころ。ポケモン達とおくりび山で遊びまわって足が棒のようになってしまった時は、こうしてくっついて元気にしてもらったり、おんぶして運んでもらう時もあった。
そんな話をすると、マリルリはジェムの頭を軽く触った。撫でようとしてくれたのだろうか。それとも、あのころに比べて大きくなったねと言いたいのかもしれない。
「ふふ、ありがと。頼りにしてるわ。勿論、みんなのことだよ」
マリルリだけでなく、今はモンスターボールの中にいる他の手持ち達とも話す。仲間になった時期はそれぞれ違うけれど。物心つく前からこのポケモン達と過ごしてきたジェムにとってはみんな大事な友達で、兄や姉のような存在で、頼れる相棒だ。
5分か10分ほど手持ち達とお喋りしたあと、ジェムは立ち上がる。疲労感が取れたわけではないが、もう体はしっかり動く。これで十分だ。マリルリはちょっと心配そうに見つめてきたが、両手で拳を作って胸の前に当てる。
「大丈夫。もうすぐジャックさんが本気で戦ってくれるんだもの。あの人退屈なのが苦手だからあんまり待たせちゃいけないわ」
手持ちのみんなが頷いた。仲間とのもう一つの共通点は、みんなこのピラミッドを支配するジャックと何度も戦ってきたことだった。誰よりも老いているけど子供っぽいあの人は、きっと自分たちをうずうずして待ってくれているだろう。
ジェムたちはジャックとおくりび山で毎日のようにバトルをしたが旅に出る直前の一度しか勝てなかったし、一度も本気で勝負してくれたこともない。「手加減してあげるから、全力でかかっておいで!」というのが彼の口癖だった。
「それじゃ、行くよ皆!お父様みたいに、ジャックさんをびっくりさせて楽しませてあげるんだ!」
気合を入れて、歩き出す。ぐるぐる曲がる道を歩いていくと、
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