通りもの
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わらず冷たい。さぁ…と、頭の芯が冷えていくのを感じた。俺は我知らず、声に出していた。
「―――奉が死んだら、きじとらさんは僕のものになってくれますか」
刃物がびくりと震えた。動揺が走ったみたいだけどきっと一瞬だ。すぐに己を取り戻して、やるべきことをやるのだろう。俺は急にどうでもいいような気分になった。…あーあ、どうしてそんなこと考えたんだろう。奉が、死んだら。
「おい青島!穏やかじゃねぇな!!」
野太い声に呼び止められ、俺(と多分きじとらさんも)は飛び上がった。
「刃傷沙汰はいけねぇよ!痴話喧嘩か!?」
またしても巨大な段ボールを抱えた鴫崎が、俺たちに駆け寄って来た。きじとらさんは刃物をすっと引くと、俺の脇をすり抜けて、蝶のような袖を翻して石段を駆け下りていった。
「……なんだぁ?きじとらさん、暑さでどうにかなったのかぁ?」
いつも通りの乱暴な足取りで近づいてくる鴫崎を間近に感じた時、俺は、崩れ落ちて泣いた。
要は、俺は振られたのだ。
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