570部分:第八十二話 嵐を前にしてその一
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第八十二話 嵐を前にしてその一
嵐を前にして
ムウ達はカルカッタに向かい続けていた。もう敵が来ることはなく旅路はのどかなものであった。だがそれでも彼等の中には緊張もあった。
「今は何もないけれど」
「そうよね」
ジュネとクレウサが牛車の中で話していた。
「カルカッタでの決戦に備えてね」
「英気を養っておかないとね」
「けれど。あれよね」
「インドって広くない?」
カサンドラとスカーレットはこのことに困った顔をしていた。
「これまた随分と」
「広いってのは聞いていたけれど」
「ああ、それは確かにね」
「その通りね」
ジュネとクレウサは二人のその言葉に頷いたのであった。牛車の中は日が入らず比較的涼しい。腰にはクッションを敷いてそれで快適に過ごしていた。
「いざ実際に来てみると実感するわよね」
「全く」
「何言ってんだよ、皆同じだよ」
「そうだよ」
ここで魔鈴とシャイナが四人に告げた。
「他の連中だってだだっぴろい国に行ってるんだよ」
「アメリカとか中国とかロシアね」
「あとオーストラリアとかね」
「そういうところばっかりなんだよ」
こう話すのであった。
「ドイツとかイランとかペルーだって結構な距離移動したしね」
「あたし達だけじゃないってことさ」
「そうなの。だったら」
「この旅もあれなのね」
「普通なんだ」
あらためてこのことを認識する彼女達であった。
「成程、道理で一回出陣したら戻るのが遅い筈ね」
「時間がかかるから」
「それでなの」
「そういうことだよ」
「まあ旅ってことさ」
こういうふうに気楽に考えている二人であった。
「まあそれでね」
「いいかい?」
「はい、何か」
「あるの?」
「果物食べるかい?」
「どうだい、それは」
白銀の二人はここで四人にある果物を出して来た。それはマンゴーであった。見れば十個以上はある。それぞれの大きさもかなりのものである。
「マンゴーだけれどね」
「どうだい?」
「あっ、マンゴー」
「美味しそうよね」
「ええ、確かに」
四人もそのマンゴーを見て笑顔になる。喉がごくり、と動いてさえいた。
「それじゃあ今から」
「いいかしら」
「このマンゴー」
「ああ、いいよ」
「何個でもあるからね」
こう気前よく返す二人であった。
「幾らでも食べていいよ」
「冷えてるしね」
「冷えてるって」
「氷かお水でもあったの?」
「この牛車の中で」
四人はそのことに目を少し丸くさせて問うた。見たところこの牛車のほろの中にはそうした水槽や氷といったものはない。それでどうやって冷やしているのか疑問に思ったのである。
一応見回す。しかしであった。
「ないわよね」
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