第四幕その五
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「毛にもいいから」
「だから入っているのね」
「そうよ」
こう言うのです。
「ここの温泉は何度も入っているのよ」
「何か皆がそうね」
「それだけいい温泉ってことよ」
誰もが入るまでにです。
「だからトロット達もいるのよ」
「ええ、私もこの温泉好きよ」
そのトロットの言葉です。
「お風呂は元々大好きだけれど」
「この温泉はよね」
「特に好きだからね」
「こうして入ってるのね」
「近くに寄ったから」
それを縁としてというのです。
「入っているの」
「そうなのね」
「今日は特によく寝られそうね」
「そして明日もね」
ビリーナも言います。
「楽しい旅よ、そして明日には」
「あんたのお国に着くのね」
「そうよ」
まさにという返事でした。
「だから楽しみにしているのよ」
「まあね、楽しみにしておくわ」
エリカはお湯を楽しみつつビリーナに答えました。
「知ってる国だけれどね」
「知っていても楽しめるでしょ」
「それはその通りよ」
「だからね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「あんたが一番楽しそうね」
ビリーナのうきうきとした感じを見ての指摘です。
「どうにも」
「それはそうかも知れないわね」
「自分の国に帰られるから」
「だからよ、皆私の家族なのよ」
お国にいる鶏達はというのです。
「子供に孫、ひ孫とね」
「あんたの家族に会えることもあって」
「本当に楽しみなのよ」
心からというのです。
「楽しみなのも当然よ」
「そういうことね」
「そう、あんたも帰るお家があるでしょ」
「それは今は王宮ね」
これがエリカの返事でした。
「アメリカにいた時も住んでる場所はあったけれどね」
「今は王宮が、なのね」
「私のお家よ」
「じゃあ帰るのは」
「あそこよ」
王宮に他ならないというのです。
「あんたみたいに肉親はいないけれどね」
「お友達はいるってことね」
「そうよ、ドロシーにトロットにね」
「ええ、確かに困ったところもあるけれど」
名前を出してもらったトロットが応えます。
「エリカは私の友達のうちの一匹よ」
「そうでしょ」
「そう、難しい娘だけれど」
何かと、というのです。
「悪戯好きで」
「猫は悪戯がお仕事よ」
「だからっていうのね」
「そうよ、だからいいわね」
「悪戯のことは」
「気にしないことよ」
こう悪びれずに言うのでした。
「わかったわね」
「まあこういう娘だけれど」
今度はやれやれといったお顔で言うトロットでした。
「この娘もオズの国の住人でね」
「私達にとってもなのね」
「友達よ、勿論ナターシャ達もそうで」
トロットはナターシャと恵梨香も見ます。
「そしてガラスの猫もね」
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