569部分:第八十一話 恐怖の九人その六
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第八十一話 恐怖の九人その六
「アイオロスはまだこちらには来ません」
「そうなのですか」
「何かがっかり」
「そうよねえ」
「まさかって思ったのに」
それで明らかに落胆する彼女達だった。どうやら彼女達はアイオロスに対してもかなりミーハーめいた好意を持っているようである。
「残念」
「カルカッタでかしら」
「みたいね」
「まあそんなに落胆することはないよ」
「そうだよ」
ここでまた言う魔鈴とシャイナだった。
「だからね。それでね」
「何かあったのかい、ムウ」
「そろそろ宿をと思いまして」
彼が言うのはこのことだった。見ればもう日がかなり落ちてきていた。
「それはどうしましょうか」
「ああ、そうだね」
「もう夕方だしね」
魔鈴とシャイナもこのことに頷くのだった。
「それじゃあそろそろ」
「そうだね。どっかの宿に入って休むか」
「そうしましょう。とはいっても」
ムウはここで周囲を見回す。魔鈴達は牛車の出入り口から顔を出してそのうえでムウとやり取りをしながら周囲を見回していた。しかしであった。
「何か何もないね」
「そうだね」
「見渡す限り大平原」
「左手には川」
「そればっかり」
基本的に狂闘士達と戦ったその場と景色は変わっていなかったのである。
「家が一軒も見えないし」
「何もね」
「どうしようかしら。また寝袋?」
「そうなるのかしら」
それを危惧したその時だった。不意に前の方に村が見えてきたのであった。
「村が見えましたよ」
「あっ、そうですか」
「村がですか」
青銅の者達はそれを聞いてすぐに喜びの声をあげた。
「それじゃあすぐに」
「その村で宿を」
「そうしましょう」
「そうだね。じゃあまたカレーを食べてね」
「休もうか」
こう話してであった。村に入る。その村は小さいながらも賑やかな村だった。一行はそこに入ってとりあえずはほっと一息ついたのであった。
「やっぱりね、寝袋ってね」
「今一つ安心できないし」
「完全に休んだ気にはならないわよね」
「そうそう」
それが青銅の四人の意見であった。
「だからここは思い切って」
「宿屋に入って」
「休みましょう」
「はい、それでは」
ムウも彼女達の言葉を受けて言う。
「中に入りましょう」
「了解っ」
こうして今は静かで落ち着いた休息を取る一同であった。しかしそれは戦いの前のほんの息抜きに過ぎないのもまた事実であった。
第八十一話 完
2009・12・26
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