ターン61 墓場の騎士と最速の玩具
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ト、お前が加わってくれるならこの侵略も安泰だ」
やはり、狙いは僕か。それにしても、覇王?新しく出てきたワードの持つ禍々しい響きに、目を閉じながら緊張が高まっていくのを感じる。だがそれは意外にも、同じ暗黒界であるケルトにとっても初耳の単語だったようだ。
「おい、ちょっと待てや。覇王って誰だ?そんな肩書の奴は俺がいたときにはいなかったはずなんだがな」
「そうだったな、お前はまだ知らないのか。覇王様は素晴らしいお方だよ。数日前に突如現れ、ブロン亡き後に彗星のごとく我々を纏め上げた。あのお方のおかげで、我々の侵攻は大幅に効率化された。あのお方こそ、まさしくこの世界を統べるにふさわしい人物だ」
わずか数日前に現れ、ブロンが消えた後釜に着いた覇王、ね。これまで何度か聞いてきたあの噂話は、どうやら思った以上に正確だったらしい。となると、その覇王とやらが赤い服を着ていたというのもおそらく本当のことだろう。
まあ常識的に考えれば、十代がここにいるなんてことあるわけないんだけどね。ここ最近皆に会ってないから、少しおセンチな気分になっているだけだろう。よくない兆候だ、もっと気張っていかないと。
「おい、ちょっと待てよ」
思わぬところで手に入れた情報からふらふらと連鎖式にどこかへ行こうとしていた思考が、ケルトの不機嫌そうな声で現実に引き戻された。
「ん、どうした?」
「そりゃこっちのセリフだ馬鹿、どうしちまったんだお前ら?黙って聞いてりゃ侵攻だの侵略だの、俺の知ってる暗黒界はどこに行っちまったんだよ?ここに戻ってきてから色々と見たけどよ、こんな無差別な攻撃がお前らの言う侵略なのか?なあ、答えろよ。俺が納得するような答えが出せないっつーなら、このガキは渡せねえな。成り行きとはいえ同じ飯食った相手だ、欲しいからってハイそうですかなんて差し出しゃしねえよ」
「……変わってないな、お前は。昔から自由で身勝手で、実力はあるくせに帰属意識がまるでない。そのせいでお前がここを出て行ってからは、お前の存在自体つい最近までなかったことにされていたからな」
「当たり前だ、俺は変わっちゃいねえよ。何があろうと、どこに行こうと、俺そのものは変わりようがねえ。勝手に変わってんのはお前らだ、昔はもっとまともな奴らだったってのに」
何があろうと、どこに行こうと、俺は俺……か。黙って聞きながら、その発言には少しばかり思うところもあった。僕はこんな風に、自分のことを胸張って言えるだろうか。ダークシグナーとして少しづつ破滅の道に近づきつつある僕と、元人間の遊野清明としてその運命を避けようとしている今の僕。わからない。
「昔の話はいい。そうか、どうあってもその人間を渡さないというのなら、仕方がない。鬼神ケルトは異国の地で風来坊のまま死んだ、昔の縁で墓
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