彼の戦を伝える者達 〜小さいおじさんシリーズ14
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云々は買い被りが過ぎると思う。
「だから卿は無粋だというのだ。どうせネタになるのは真偽入り乱れる史実という名の勝者目線の記録。赤壁に限らずな。…それならば文献に残る有名武将の人物像を繊細に表現し、一つの戦を取り巻く人間模様を描き出すという方法も」
「人となりを繊細に表現!?お前はアレで結構だろうが、余はものすごい雑な悪者になっているが!?」
ツボに入った白頭巾が痙攣しながらのたうち回る横で、端正が余裕のため息をついた。
「ならば貴様の推し作品は何だ」
「蒼天航路、一択よ」
……えぇ〜?
あれはあれで色々偏り過ぎじゃないか?
「人間模様を描くというのなら、チャラい心象描写などではなく、人物同士の個性のぶつかり合いよ…人物そのものが持つ迫力を描かずして何の人間模様よ!!」
「…貴様、本当に分かりやすい男だな…」
「人のこと云えるか」
お互い苦笑交じりで軽く和解しかけた辺りで、のたうち回っていた白頭巾がむくりと起き上がった。
「蒼天航路だけは、ありません」
羽扇で口元を隠してはいるが、眉間に刻まれた皺が深く、昏い憤りを現している。
「な、なんだ貴様いきなり入って来て」
なに急にビックリしたぁ、みたいな顔をしているが口元が半笑いだ。…こいつらはもう…。
「分かっていますよ、私への嫌がらせでしょう」
「ちょ…なに?怖いんだけど?」
豪勢がとぼけ切った口調でわざとらしく驚いてみせる。
「えー、かの傑作に問題シーンとかあったかのう。ちょっと見返してみるか、えーと…わー、なんかどっかの変態軍師が初対面の劉備の前で勃起状態で現れたー。その後の発言も色々やばーい。わーこの変質者、もしかして後に蜀の丞相になったりすんのかなー。蜀やばいー、やばすぎー、劉備逃げてー、超逃げてー」
『蒼天航路』の単行本をパラ見しながら棒読み口調で『何処ぞの丞相』を虚仮にしまくりトドメに初対面からのちんこ見せシーンの物真似を始めた。ここ最近、白頭巾の根性悪さに隠れて忘れかけていたけれど、こいつも相当根性が悪い。
「ちょ、もうやめ…」
端正は肩を震わせながら笑いをこらえている。一緒になって白頭巾を虚仮にしたい気持ちはあるものの、こんな下ネタに乗っかって豪勢と同じレベルに品性を落とすことに抵抗があるようだ。傍らの白頭巾は、軽く咳ばらいをして居住まいを正し、羽扇を顎にあてた。頭巾と羽扇、それに人を見下すような余計な慇懃さ。それはもう、ステロタイプな『蜀の軍師』をことさらに主張するようなポーズだ。…何こいつ、ムキになってんのか?
「人物そのものが持つ迫力…?それに拘り過ぎた結果、呂布が『パワー系の可哀想な人』になっているじゃないですか。アニメじゃ作中ほぼ雄叫びしか聞いてないんだけど。何の生物ですかあれ。恐竜?」
「ぐっほっ…」
「瑾兄さんも何かも
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