真最終話 変わりゆく運命
前編 変わる未来、新たな旅立ち
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の瞬間に解き放つかのように。
そんな彼女の、弱さを汲んでか。ダタッツはそれ以上何かを言うことなく、静かに彼女の行動を受け入れていた。そのままようやく、手綱を引き――馬の歩みを進めるまで。
「ダタッツ殿……。姫様を、頼む」
「……ああ、わかった」
ようやく気を取り直したヴィクトリアとも、別れの挨拶を済まし。今度こそ、彼は旅立って行く。独りになるはずだった旅路に、予期せぬ人物を伴って。
上気した頬のまま、自分の背にもたれ掛かる姫君を一瞥したのを最後に、彼は振り返ることなく旅路を進んでいく。その行く先を見守る女騎士は、今まで背負い続けてきたものを下ろしたかのような――穏やかな笑みで、彼らの門出を見送っていた。
「ダタッツ殿……ありがとう」
――この国の誰もが、どこかで胸に秘めていながら。過去の因縁ゆえに、口に出せないままでいた言葉を――その旅立ちに添えて。
「ローク君、良かったのか? 見送りに行かなくて」
「別に。オレはまだまだ未熟だからな。次にダタッツに会って、あいつをビックリさせてやる日までは――修練あるのみ、さ。あんたこそ弟子の門出だってのに、ここで油売ってる場合かよ」
「……その必要はない。もうあの子は――いや、彼は。見送りが必要になるような男ではあるまい」
「はは、違いねぇな」
その頃、喧騒の中で復興に尽力していたバルスレイとロークは。互いに笑い合いながら、別れを惜しむ必要などない、と言わんばかりに。今の自分達が為すべき使命に、奔走していた。
(私は、彼の父にはなり切れなかった。だが、せめて……彼の強さだけは、信じてやりたい。もはや、私にできることはそれだけだ)
息子のように想ってきた青年の行く末を憂う一方で、彼の選択を尊重したいとも願う。そんな矛盾した思いを胸中に抱えるバルスレイが、一瞬だけ弟子がいるであろう方角を見遣る時。
「ローク君、バルスレイ様! そろそろお昼にしませんかー!」
遥か遠くから自分達を呼ぶ大声が轟いてくる。元気が取り柄と評判の、料亭の看板娘だ。
「よーし、そいつはそこに積んでくれ! ……ふう」
「どーしたんでぇ、親父さん。ため息なんてらしくもねぇ」
「……いや、なに。いなくなっちゃいけねぇ奴がいなくなる――そんな気がしてよ」
彼女の隣では、彼女の父代わりが男達を率いて、復興を進めていた。――明るく、豪快なようで。その面持ちは、どこか儚い。
「む、もうそんな時間か。……行くか、ローク君」
「おう、行く行く! 朝っぱらから荷物だの何だの運んでばっかで、腹ペコなんだ!」
その一方で。彼女の呼び声に応じるように、二人は歩み出して行く。希望に溢れた、笑みを浮かべて。――また、暖かい食事を持って彼らを迎える茶髪の少女も
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