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ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
真最終話 変わりゆく運命
前編 変わる未来、新たな旅立ち
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女には、長く心配を掛けることになるな……だが、いつかは帰ってくる。今は、そう信じて頂く他はない」
「私も――それを信じたい。この国と姫様、そして私の命を救って下さった貴殿の言葉を、信じたい。だから――必ず帰ってきてくれ」
「承知した」

 そんな姫君の苦悩に胸を痛め、切なげな表情を浮かべるヴィクトリア。そんな彼女を励ますように、ダタッツは穏やかな微笑を送る。

 ――そして、彼を乗せた馬が。嘶きと共に蹄を鳴らし、この国を去りゆくため、踵を返した瞬間。

「お待ちなさいッ!」

「……!?」

 聞こえるはずのない声が轟き――現れるはずのない影が。颯爽と、ダタッツが跨る馬に飛び乗ってきた。ブラウンの美しい髪を、荒々しく靡かせて。
 まるで風に舞う葉のように、艶やかな軌道を描き――鞍の後ろに収まる少女。新緑の姫騎士の鎧を纏う彼女は、得意げな笑みを浮かべると――信じられない、といいたげな表情のダタッツとヴィクトリアを、交互に見やる。
 そして――不服そうに、鼻を鳴らすのだった。

「全く……わたくしを差し置いて、何を勝手に話を進めておられるのですか。油断も隙もありませんわね」
「ダイアン姫……!」
「ひ、姫様……!」
「なんですの? 御二方。まるで、信じられないものを見るような眼でわたくしを見て。――わたくしがあのまま、ダタッツ様がおられなくなるまで引き篭もっているつもりだった、とでも?」
「し、しかしっ……」

 先程まで塞ぎ込んでいた、と話されていたとは思えないほどの、溌剌とした表情でダタッツを見遣るダイアン姫。その佇まいに、黒髪の騎士は困惑と共に振り返ると――

「んっ……」
「……!」

 ――その口を、塞がれてしまった。柔らかく、温かい――姫騎士の、唇によって。

 僅か数秒の口付けだったが、その体感は永遠のように長く――彼らの脳裏に焼き付いている。
 そして、ようやく互いの唇が離れた時。上気した頬のまま、愛おしげに騎士を見つめる姫君は、隠すことなく己の想いを口にした。

「わたくしは――もう、決めましたの。もう、自分の気持ちに嘘はつかない。背も向けない。ただ真っ直ぐに――想うままに、愛する人を愛しますわ」
「ダイアン姫……」

 飾り気のない、直球の告白。それを受け、ダタッツは逡巡する。顔を赤らめて視線を逸らし、咳ばらいを繰り返すヴィクトリアを一瞥して。

 ――受けても、いいのだろうか。ジブンが、彼女の愛を……。

 そう重い悩む彼の思考を断ち切るように、ダイアン姫は再び声を張り上げる。反論など許さない、と言わんばかりに。

「ですので――その出稽古。わたくしも、同行しますわ!」
「なっ……!」
「資格がなくとも、わたくしを守ってくださるのでしょう? なら、わたくし
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