【ネジおじさん、風邪を引く】
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「ゴホ、ゴホッ……」
(───参ったな、風邪気味になったかもしれない。昨日、ボルトとヒマワリと一緒になって、雪の中をはしゃぎ過ぎてしまったか……)
その年初めて降り積もった真っ白な雪景色に大はしゃぎのボルトとヒマワリを相手に昨日ネジは、雪合戦や雪だるま、かまくら作りなどで二人と思い切り楽しく遊んだ。
ネジにとって雪は想い出深く、幼い頃冬の季節は雪が降り積もると父親のヒザシが雪合戦をしてくれたり、一緒に雪だるまや雪うさぎを作ったりしてくれたので、一面真っ白になる冬が大好きだった。
……しかし、父を失った季節でもある悲しい記憶が重なり、一時期は冬が来る度にとてもつらい思いをしていた。
それでもその悲しみを乗り越え、ボルトとヒマワリのおじさんとして、父親がそうしてくれたように子供達と雪遊びを満喫し、冬の季節を再び愛でていられる。
───とはいえ今朝起きたら身体がだるく、喉が痛み咳が出てしまう。
(久し振りに楽しく雪遊びをしたというのに、風邪気味になってしまうとは……、去年は大丈夫だったんだが。俺も歳かな...。いやとにかく、今日は大事な用があるわけでもないし、これ以上悪くしないように大人しく寝ているか……)
それから午後になり────
「ネジおじさ〜ん、お母さんとクッキー焼いてきたよ〜! 一緒に食べよ〜?」
ヒマワリの元気な声が玄関から上がった。...が、ネジの身体は鉛のように重く、思うように布団から起き上がれない。
「……あれぇ、おじさんいないのかなぁ」
「ネジ兄さんはちゃんと鍵を閉めて出かけるから、鍵が掛かってないなら居るとは思うんだけど……、確認の為にお家の中に入ろっか」
従妹のヒナタは娘のヒマワリを伴い茶の間に来てみたがネジの姿はなく、その代わり、咳き込むような音が隣の部屋のふすま向こうから聞こえてくる。
「あら...? ネジ兄さん?」
「あ……すまん、出迎えられなかった……」
ヒナタとヒマワリがふすま向こうの部屋を開けると、布団から身体半分が出た状態でネジが長い髪を若干乱してうつ伏せになっており、おもむろにこちらに向けた顔色は良くなく、気だるそうな半眼をしている。
「お、おじさん、どうしたのっ?」
「ネジ兄さん、大丈夫?」
心配した二人はすぐネジに近寄り、ヒナタはしゃがんだ姿勢で、布団からはみ出てうつ伏せの従兄の上体をゆっくりと起こしてから布団に寝直させた。
「今日体調が悪くて、ずっと寝ていたの?」
「いや、大した事はない……。ちょっとした風邪気味で、寝ていれば良くなるだろうと思って───ゴホ、ゴホッ」
「兄さんったら、ちょっとしたじゃなくてもう風邪引いてるじゃないの」
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