7. 熱いお茶
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の左手を指差した。俺の左手には、あの時隼鷹がつけてくれた指輪が、白金色の輝きを今も放ち続けている。
「ええ。それで、この指輪の磨き方を教えて欲しいんです」
「? 別段汚れてるようには見えないが……あの彼女のものの方かな?」
店主の質問に対し、俺は無言で首を縦に振った。三式弾の炎で炙られたあの指輪は、今すすがついて黒ずんでいる。俺はそれを元のキラキラと美しい指輪に戻したくて、店主に磨き方を聞くためにココに来た。
店主は再びお茶をずずっとすすった後、予想外の質問を俺に投げかけてきた。
「……なぜ磨くんだ?」
「へ? なぜって……汚れたから……」
「指輪の汚れとくすみは、その人が必死に生きた証だ。汚れ、傷つき、そしてその人だけの指輪になる」
「……」
「いわば指輪の汚れは、その人の人生そのものなんだよ。それをきみは、綺麗に落として、何の変哲もない指輪に戻してしまおうというのか?」
「……」
「慎重に答えなさい。納得できたら磨き方を教えよう」
困った……すんなりと教えてくれるものだとばかり思っていたのに……生半可なことでは納得してくれそうにないぞ……この人は自分の仕事に誇りを持っている。きっと妥協することはない。本当に納得してくれないことには、きっと磨き方を教えてくれないだろう。
「彼女は……艦娘です」
「だから?」
「先日彼女は、戦闘で大怪我を負いました。指輪はその時、炎に炙られてススで汚れてしまったんです」
「だから?」
「彼女は必死に指輪を守ったんです。でも汚れてしまった。俺はその気持ちを大切にしたいんです。体を張って指輪を守った彼女の気持ちを大切にしたい」
「私から言わせれば、その汚れは彼女の気持ちとがんばりの証だ」
「……」
「もし理由がそれなら、私の答えはノーだ。ススだけ落として、その汚れを愛して生きなさい」
「……」
俺は、飾らずに本心を告げたつもりだ。身を挺して指輪をかばった隼鷹の気持ちを無にしたくない。だから指輪を磨きたい。だから指輪を元に戻して、『指輪は無事だったぞ』と安心させたいんだ。
でも、店主はそれでは納得できないという。店主の言いたいことはわかるし、その考えも理解はできるけれど……
やばい。なんて言えば納得してくれるのかまったく分からん……頭が混乱してきた……
「……彼女は……隼鷹は……天の川に似てるんです」
「……?」
あれ? 考えすぎて意味がわからなくなって変なことを口走り始めたぞ……?
「あのドレス姿の隼鷹を見た時、俺は……音を聞きました」
「音?」
やばいやばい……これ以上言うとただの変人扱いされる……でも一度話し始めた俺の口は止まらない。これ以上言うなというおれの指示を無視して、一言一言余計なことを口走
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