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恋姫†袁紹♂伝
第51話
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、柵も破壊されていた。
 歩兵を遮った硬木の柵も、大炎の騎突の前では形無しである。

「華雄副将、主の命によりお迎えに上がりました」

「主の……?」

「ハッ、我らが主、袁紹様です。機を見て大橋の魏軍を蹴散らすように仰せ仕りました」

「そうか、正直助かった。兵の壁と柵を前に難儀していた所だ」

「力になれた事、光栄に思います。後は我々にお任せ下さい」

「……? 一緒に下がるのではないのか?」

「いえ、大炎はこのまま魏本陣に夜襲を仕掛けますので」

「な!?」

「ご安心を、本格的な攻撃はしません。狙いは敵軍の疲労です。
 程ほどに荒らして帰還しますよ」

 それを聞いて華雄は溜息をつく、自分達が行った奇襲で魏本陣の警戒度は上がっている。
 いくら大炎といっても、そこに突っ込んでは唯ではすまないはずだ。
 彼の言葉通りなら、本陣の外周に攻撃を加え緊張状態にするのが目的だろう。
 投石機が破壊され、大炎の夜襲にも怯えなくてはならない。泣きっ面にハチとはこの事だ。

「所で、(れん)や音々音の姿が見当たらないが?」

「……お察し下さい」

 時刻は深夜、音々音はお寝むの時間である。恋に至っては方向音痴だ。
 暗闇のなか馬で走らせるなど、どこに行くかわからない。下手をすれば魏本陣の中心に行きかねない。それはそれで戦果をたてそうなものだが、万が一を考え、今回はお留守番である。

「最後にもう一つ、魏本陣に続く道に大きな落とし穴がある、注意しろ」

「良くお気がつきに……」

「命をとして手に入れた情報だ」

「……感謝を!」

 大炎一同、華雄達に向かってしっかり拝手すると馬を走らせた。
 そんな彼らを見守る華雄の隣に兵士が一人、こっそりと耳打ちするように呟く。

「姉御、あれ絶対誤解してますぜ」

「何も間違った事は言っていない。それに、あの方が燃えるだろ?」

 対大炎用に魏軍が設けた落とし穴、発見は偶然だった。
 先に撤退し合流地点に向かっていた華雄兵の一人が、馬を一頭、先頭を走らせていたのだ。
 別に罠の類を疑った訳ではない。ただ、暗がりで地形の把握が難しかった為、転倒を恐れたのだ。

 その馬が突然視界から消えた。何事かと止まった兵達の目に映ったのは巨大な落とし穴。
 それもご丁寧に、薄い木の板に土をかけてカモフラージュしてある。
 あのまま走っていたら皆落ちていた。魏軍の馬に感謝だ。

「今回ばかりは、魏軍が哀れでなりません」

 周り風景が歪んで見えるほどの気を発しながら疾走する大炎。
 魏軍の地獄は始まったばかりだ。









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