第51話
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李典の才能、カラクリ技術。
戦で猛威を振るってはいるが、それが民間に転用可能な技術である事は、華雄でもわかった。
自動衝車や、李典の得物である螺旋槍はその筆頭だろう。
ならば首にするよりも、身柄を確保して連れ帰ったほうが手柄になるというものだ。
――まさか、あの時の気まぐれに助けられるとは。
関羽が怒りに我を忘れたのに対し、張遼は怒りを力に変える。
心は炎のように燃え滾りつつ、頭は凍てつく氷のように冷静。
矛は鋭さを増し、感覚が研ぎ澄まされ、相手を倒す事にのみ全神経を使う。
華雄も恐れる、鬼炎を背負った張遼の姿である。
しかし、李典の無事を知った張遼は安堵の溜息を吐いた。
目に見えて殺気が小さくなっていく。彼女が強敵である事に変わりは無いが、大分ましだ。
「まぁ、真桜が無事だったというても、見逃す理由にはならへんな」
「そうだろうな。だが、時間切れだ」
「あん? 何言って――どわあああああ!?」
後方から猛スピードで乱入した気配を感じ、張遼は慌てて真横に跳ぶ。
転がりながらも確認すると、それが騎馬である事がわかった。
「遅れて申し訳御座いません!」
「首尾は」
「ハ、かく乱隊は撤退済み。残るは我々だけです」
「よし、退くぞ!」
『ハッ!!』
「ちょ、待たんかい!」
騎馬が引き連れてきた馬に次々と華雄達が跨っていくのを見て、張遼は慌てて立ち上がった。
「あんたらその馬……うちらのか!?」
「む、流石だな」
「わからいでか!」
投石機破壊の為に、華雄は奇襲隊を三つに分けた。
一つは華雄達の実行部隊、二つ目は魏軍の目を集めるかく乱隊、そして三つ目が逃走経路と足を確保する“火事場泥棒がし隊”である。派手にやるじゃねぇか、これから毎日馬を盗もうぜェ?
「逃がすか!」
「おっといいのか? 簡単な止血をしただけで李典には治療が必要だぞ」
「んなぁ!?」
「すまんな、私が不器用なばかりに」
止血を命じた兵が、手を無駄にわきわきさせながら李典に近づいたのだ。
すぐさまその兵を蹴飛ばし、華雄は仕方なく自分の手で止血を施していた。
「またな霞! 次は決着をつけよう!!」
「く、覚えとれよォッッ!」
「よかったんですか? 華雄様」
「どっちだ、李典か、張遼か」
「両方です!」
「奴は強い。李典を捕獲できる隙など無かった」
「で、ですがそれなら……」
「いっそ止めを刺すか? それこそ薮蛇だ」
大事な妹分を、あろう事か目の前で……その時の張遼など考えたくも無い。
「しかしよぉ、
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