暁 〜小説投稿サイト〜
恋姫†袁紹♂伝
第51話
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
とは、意向や方針により自然と主の色に染まるものだ。
 粗野な主に盗賊紛いのあらくれ達が、公正な主に規律ある兵達が集るように、慎重さを重んじる袁紹の周りには同色の家臣達が多いはず、自然と主の意向を汲み取り、行動や策に反映される。
 長く仕えて居る者であれば尚更だ。しかし、その理屈が通らない者が今の陽軍にいる。
 
 功を欲し、攻撃に特化し、蛮勇とも呼べる行動も行える将。
 すなわち華雄である。
 
「……」

 もしも、襲撃犯が華雄一味であったら。もしも、投石機の場所を探し当てたら。
 そしてそこに居る製作者を見つけ出したなら――。 










「オラァァァァッッッ!」

「!?」

「グァ!?」

 入り口に回る事無く天幕を切り裂いて進入。近くに居た兵を切り伏せる。
 魏軍の鎧を着込んでいるが、彼らが敵である事は即座に理解した。
 
 場所は投石機がある天幕内、魏兵がいても不思議ではない。
 ましてや夜襲に遭っている。優秀な兵達が自主的に投石機を警護していた可能性も否めない。
 だがその期待は、天幕内の兵達が手に持っていた斧や槌で掻き消えた。

 敵に備える兵達が、槍や腰の剣を差し置いてその二つを使うはずが無い!

「やっぱあんたか華雄。こんな状況じゃなけりゃ嬉しい再開だったわ」

「そうだな、私も今はお前に会いたくなかった」

「……せやろな」

 張遼の目に映ったのは、投石機だったであろう残骸と倒れ伏す妹分の姿。

「……」

『!?』

 漏れ出た怒気に兵士達が後ずさりする。華雄が間に居なければ尻餅をついていたに違いない。
 濃い闘気が天幕内を満した。勝てない――と、華雄に思わせる程に。

「李典は生きている」

 突然の言葉に張遼は警戒心を露にした。当然だ、華雄達が李典を生かしておく必要はない。
 此方の気を散らし、不意を突くためと考えるほうが自然である。
 だが――張遼は仄かな期待を胸に倒れている李典を見た。

「!」

 か細いが呼吸している。生きているのだ!


 それは偶然だった。李典の攻撃を避け、戦斧を振り下ろすだけだった華雄。
 まさに振り下ろそうとしたその瞬間、彼女の目に埃が入ったのだ。その正体は、李典が抉り出した地面の一部。
 そこに一瞬の間が生じ、李典はすかさず得物を手放し後方に跳んだ。致命傷を免れたのだ。
 しかし、浅いとは言え受けた斬撃の痛みと、受身を取る間も無く地面に倒れた衝撃から気を失ってしまった。

 無論、華雄は止めを刺すべく戦斧を振り上げ――――。止めた。

『止血してやれ』

『え、いいんですかい?』

『ああ、こいつは生かして手土産にする』

 惜しんだのは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ