第51話
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とは、意向や方針により自然と主の色に染まるものだ。
粗野な主に盗賊紛いのあらくれ達が、公正な主に規律ある兵達が集るように、慎重さを重んじる袁紹の周りには同色の家臣達が多いはず、自然と主の意向を汲み取り、行動や策に反映される。
長く仕えて居る者であれば尚更だ。しかし、その理屈が通らない者が今の陽軍にいる。
功を欲し、攻撃に特化し、蛮勇とも呼べる行動も行える将。
すなわち華雄である。
「……」
もしも、襲撃犯が華雄一味であったら。もしも、投石機の場所を探し当てたら。
そしてそこに居る製作者を見つけ出したなら――。
「オラァァァァッッッ!」
「!?」
「グァ!?」
入り口に回る事無く天幕を切り裂いて進入。近くに居た兵を切り伏せる。
魏軍の鎧を着込んでいるが、彼らが敵である事は即座に理解した。
場所は投石機がある天幕内、魏兵がいても不思議ではない。
ましてや夜襲に遭っている。優秀な兵達が自主的に投石機を警護していた可能性も否めない。
だがその期待は、天幕内の兵達が手に持っていた斧や槌で掻き消えた。
敵に備える兵達が、槍や腰の剣を差し置いてその二つを使うはずが無い!
「やっぱあんたか華雄。こんな状況じゃなけりゃ嬉しい再開だったわ」
「そうだな、私も今はお前に会いたくなかった」
「……せやろな」
張遼の目に映ったのは、投石機だったであろう残骸と倒れ伏す妹分の姿。
「……」
『!?』
漏れ出た怒気に兵士達が後ずさりする。華雄が間に居なければ尻餅をついていたに違いない。
濃い闘気が天幕内を満した。勝てない――と、華雄に思わせる程に。
「李典は生きている」
突然の言葉に張遼は警戒心を露にした。当然だ、華雄達が李典を生かしておく必要はない。
此方の気を散らし、不意を突くためと考えるほうが自然である。
だが――張遼は仄かな期待を胸に倒れている李典を見た。
「!」
か細いが呼吸している。生きているのだ!
それは偶然だった。李典の攻撃を避け、戦斧を振り下ろすだけだった華雄。
まさに振り下ろそうとしたその瞬間、彼女の目に埃が入ったのだ。その正体は、李典が抉り出した地面の一部。
そこに一瞬の間が生じ、李典はすかさず得物を手放し後方に跳んだ。致命傷を免れたのだ。
しかし、浅いとは言え受けた斬撃の痛みと、受身を取る間も無く地面に倒れた衝撃から気を失ってしまった。
無論、華雄は止めを刺すべく戦斧を振り上げ――――。止めた。
『止血してやれ』
『え、いいんですかい?』
『ああ、こいつは生かして手土産にする』
惜しんだのは
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