第51話
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、どんな不備が発生するか……。
それを考えると寝られはしません!』
折りたたみ式は、官渡の戦を前提に急遽作成したものである為、十分な試運転を行えていない。
脳筋式耐久テストをクリアしてはいるものの、雨天での運用は想定外であった。
それでも張遼の言葉通り、陣に引いたあと点検を行っていた。その時は何も問題なかった。
今では大事に備え、天幕で覆い保護している。しかしそれでも――李典の不安が解消されることはなかった。
初日の攻防で魏軍の要となっていたのは紛れもなく投石機だ。
大橋からの敵を防ぎ、あの大炎の騎突を間接的に封じた。言わば、魏軍の生命線である。
その製作者である李典にかかる責任は、他者が思うよりもずっと重い。
戦力で劣る魏軍に余裕は無い。石橋を叩くどころか、修繕して渡る慎重さが要求される。
万が一、億が一の不安の種があるなら、それを見過ごすわけには行かないのだ。
事が起きてからでは遅いのだから。
『そこまで言うなら好きにしぃ』
『姐さ――『ただし』』
『あんまり時間掛けんなや』
『感謝感激雨あられ! もつべきは理解ある姉貴分や〜』
走り去っていく李典の背を、呆れながら、それでいて優しい眼差しで見送った。
問題無いはずだ。この天候と暗闇のなか夜襲を仕掛けるなど馬鹿げているし、陽軍の君主、袁紹は物事を慎重に進めるきらいがある。
それで無くとも郭嘉により、万が一と億が一に備えて見張りを配置させてある。
たとえ夜襲があったとしても、待機している常備兵で十分対応できる。
大炎で来ることがあればそれこそ飛んで火に入る夏の虫、大橋から魏本陣の間に設けた罠で足を止め、そこへ巨石が降り注ぐだろう。
肩の力を抜いた張遼は天幕に戻った。
変化があったのはその一刻後、日課を終えて就寝しようとした矢先のことである。
何やら慌しい気配を感じ外にでると――巡回兵達が走り回っている。
張遼はすぐさま一人捕まえ事情を聞き――走りだした。
本陣に少数での夜襲。本来ならありえないことである。
郭嘉が配置させた見張りの目を掻い潜った辺り、敵は少数精鋭。
人員の多い大橋から身を隠す事は不可能、大河を越えてきたのだ。
――むちゃくちゃや、相当頭いかれてるで!
危険を犯しての夜襲、それなりの目的があるはず。
将の首? 違う。少数の奇襲で討てるほど魏軍は甘く無い。
休息の妨害? 違う。それなら危険を冒さずとも、大橋に兵を集結させるなど、いろいろ方法がある。となると敵の目的は一つ、投石機だ!
――間に合え、間におうてくれ!
仕掛けた者に心当たりがある、かつては背を預けあった武人だ。
誰かに仕える兵
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ