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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十五話 決戦、ガイエスブルク(その5)
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るようだ。
艦橋はざわめいている、無駄だろうとは思った、既にグライフスが説得をしているだろうとも思った。だがオペレータに命じて彼らとの間に通信を繋がせた。わしは盟主なのだ。最後までその責任を投げ出すべきではないだろう。
スクリーンにヘルダー子爵、ハイルマン子爵が映った。二人とも興奮しているのが分かる、目が異様なほどにぎらついている。ヴァレンシュタインの首に興奮しているのだろう。
「ヘルダー子爵、ハイルマン子爵、兵を退け。後退命令が出たはずだ」
『何故退くのです! 後少しであの小僧の首を取れるのです、退く事等出来ません』
『ハイルマン子爵の言うとおりです。公も総司令官も敵を恐れすぎです。それでは勝てる戦も勝てませんぞ!』
ハイルマン子爵は分からないでもない、これが初陣だ。だが既にキフォイザーで実戦を経験したヘルダー子爵まで目の前の獲物に目が眩むとは……。
「卿らはヒルデスハイム伯と同じ過ちをする気か、兵を退くのだ!」
『出来ません! 私はあの男の両親を殺していない、それなのにずっと疑われてきた。これまでずっとあの男に怯えてきたのです。あの男を殺す事がようやく出来る! 退く事など出来ません!』
『その通りです! あの男は我等を滅ぼそうとしている。今此処で奴を殺さなければ我等はお終いです。公が兵を退くなら我等だけでもあの男を追います』
そう言うと二人は通信を切った。
恐怖か、あの二人を動かしたのは欲ではなく恐怖……。
「アンスバッハ、シュトライト、わしは間違っていたのかな」
「……」
わしの問いかけに二人とも答えなかった。分からなかったのか、それともわしと同じ気持だったのか。
「わしは彼らが己の地位、特権を守ることしか考えていないと思っていた。だが本当はわし同様、滅びる事を怯えていただけなのかもしれん」
「……」
「わしは滅びる事を覚悟している。此処まで来た以上やむを得ぬ事だと思い切った。だが彼らはその覚悟が持てなかった、持たぬまま此処まで来た。その差が勝敗を分けたと言う事か……」
「ブラウンシュバイク公……」
シュトライトが何かを言おうとした。だがその言葉をオペレータの声が遮った。
「閣下、カルナップ男爵から通信です!」
「やれやれ、忙しい事だな。物を想う事も出来ぬか……。繋いでくれ」
『ブラウンシュバイク公、ヘルダー子爵、ハイルマン子爵が撤退しません。どうされます?』
カルナップ男爵はこれまで両脇から援護を受けて戦っていた。少なくともガイエスハーケンが放たれるまではそうだった。それがこの後退においてヘルダー子爵の援護が受けられない。不安なのだろう、表情が強張り目が泳いでいる。
「止むを得ぬ、彼らの事は放置しろ。グライフス総司令官の命令どおり後退するのだ」
『それで
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