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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十五話 決戦、ガイエスブルク(その5)
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帝国暦 488年 3月 4日 00:00 ブラウンシュバイク艦隊旗艦 ベルリン アルツール・フォン・シュトライト
「閣下、グライフス総司令官から通信が」
「グライフスが?」
私の言葉にブラウンシュバイク公が訝しげな声を出した。
スクリーンにグライフス総司令官が映った。そして少し遅れてフェルナー准将の顔も映る。二人とも表情は優れない。
『閣下、これより後退命令を出します。直ちに指示に従ってください』
「撤退命令?」
公の表情には不審の色が有る。優位に攻めているのに何故後退するのか、そんな思いなのだろう。
「後退するのか、グライフス総司令官」
『はっ、ガイエスハーケンを利用して敵を罠にかけたつもりでしたが罠にかけられたのは此方のようです。敵は此方の左翼を徐々に包囲する態勢を整えつつあります。早急に後退してください』
グライフス総司令官の言葉に改めて戦術コンピュータのモニターを見た。確かに敵は徐々に陣形を整えつつある。此方は目の前のスクリーンに映る敵の逃げる姿に気を取られていた。我々の優位は徐々に無くなりつつある。
ブラウンシュバイク公が私を見た。おそらく総司令官の意見を確認したいのだろう。私が頷くと公も大きく頷いた。
「分かった、直ぐ後退しよう。しかし敵の追撃を振り切れるか?」
公の言葉に沈黙が落ちた。確かに公の心配はもっともだ、そして不安は他にもある。
『難しい事では有ります。しかしやらなければなりません。このままでは全滅です』
「そうだな、全滅するよりはましか……」
『とにかく、ガイエスハーケンの射程内に退避してください。そこまでは敵も追っては来ないはずです』
確かにそうだろう、しかし敵がそれを許すだろうか? 私の疑問を口に出したのはアンスバッハ准将だった。
「しかし敵もそれは想定済みでしょう、混戦状態に持ち込み並行追撃作戦を狙うに違い有りません。その場合ガイエスハーケンは撃てません。なし崩しに敵が攻め寄せてきます」
『その場合は味方もろとも敵を吹き飛ばす』
「!」
「グライフス、本気か? 味方殺しをするというのか?」
『本気です、味方もろとも敵を吹き飛ばす事で敵の追い足を止めます。それしか手はありません』
『小官も総司令官の御考えに賛成します』
唖然とするブラウンシュバイク公に対してグライフス総司令官、フェルナー准将が味方殺しを勧めた。二人とも思い詰めた苦渋に満ちた表情をしている。確かにそれしか方法はないかもしれない。公も同じ思いだったのだろう、ゆっくりと頷いた。
「……分かった。直ちに撤退に取り掛かろう」
通信が切れた後、ブラウンシュバイク公が厳しい表情のままスクリーンを睨んでいた。アンスバッハ准将が公に問いかけた。
「公、如何されまし
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