第3章:再会、繋がる絆
第75話「お礼」
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「...まぁ、この際は転生に関してはいいさ。」
とにかく、これで魅了が解け、この空間からも脱出ができそうだ。
...だけど、まだやる事がある。
「...このままだと、また魅了されてしまうな...。」
「っ....!...嫌....!」
僕の言葉に、奏ちゃんは助けを乞うように僕に縋りつく。
「ちょ、いきなりどうした!?」
「...嫌...嫌なんです...!もう、優輝さんの事を忘れたくない...!ずっと....ずっとお礼を言いたかったのに...!」
...そっか。知っている人を忘れてしまうのは、忘れられた人物だけじゃなく、忘れてしまった本人も辛いものだよな...。
「お礼....?」
「はい...。私は...優輝さんのおかげで生き永らえた...!生きる喜びを教えてもらった...!...ずっと、ずっとそのお礼が言いたかった....!」
「そっか....。」
僕が死んでしまったから、お礼を言える事もなく、一生を終えた...って訳か。
「本当に...本当にありがとうございます...!私に、生きる素晴らしさを教えてくれて...本当にありがとうございます....!」
「........。」
涙を流しながら僕に縋りつくように言う奏ちゃんを、僕はただ受け止める。
...本来なら、もう会えない人物だったんだ。感動は相当なものだろう。
「....ねぇ、奏ちゃん。」
「...はい...。」
「...君は、僕が死んでからの残りの人生、幸せだったか?」
これだけは聞いておきたかったと、僕は静かに問う。
「....はい。...けど、優輝さんがいないのは....。」
「そうか....。」
しばらく奏ちゃんを抱き締め続け、そして一度離す。
「奏ちゃん。僕らは転生した。だから、前世の全てを捨てる訳じゃないけど、またここから始めよう。一から...いや、例えゼロからでも。」
「....はい...!」
まだ目尻が涙に濡れているが、満弁の笑みでそういった。
「...年も近くなったんだし、これからは“奏”と呼び捨てにするけど...いい?今じゃ、呼び捨ての方がしっくりくるからね...。奏ちゃんも、敬語はなくていいから。」
「はい....うん...。優輝さん....。」
奏ちゃん改め、奏も僕に対しての敬語が少し抜ける。
さん付けは前から変わらないようだが。...まず、魅了状態で名前を呼ばれた事がない。
「....さて、後回しになったけど、魅了の予防をしよう。」
「...!忘れてた...。」
忘れてたって結構重要な事なのに...。
...まぁ、それだけ僕の事が大きかったと考えれば、悪い気は
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