暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■???編 主人公:???■■
広がる世界◆序章
第六十八話 迷子
[1/3]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 運転中、角をまがったところまでは覚えている。突然の胸の痛みに襲われ、思わず身を縮めたところで視界が真っ暗になった。ブレーキを踏もうにも、身体が動かなかった。その後の記憶はない。

 彼は土の上で目を覚ました。
 ゆっくりを上体を起こす。ふらつきはない。身体を見下ろすと、彼は質素な綿の洋服に身を包んでいることに気づいた。現代では見慣れない服だ。中世ヨーロッパの農民が着ていそうな服と言える。あたりを見渡すと、草原が広がっていることが分かった。かなり広々とした草原に彼は違和感を覚えた。北海道の田舎ならこんな景色もあり得るだろうが、彼が直前までいたのは大都市圏の郊外だったはずだ。おかしい、どうやら記憶を失っているようだと彼は思った。
 なにはともあれ、立ち上がって脚を払う。荷物を確かめようとして、彼は自分が何も持っていないことに気づき、青ざめた。ポケットを探ろうとするも、彼の着る服にはポケットが無い。つまり、携帯も無ければ財布も無いということだ。どこか分からないような人里離れた場所で、連絡手段を絶たれ、住居どころか食料も水も確保されていない。上を見上げると、太陽は上に登り切ったところだった。つまり今は正午ぐらい。日が沈むまでの5時間ほどの間に、彼はなんとか安全地帯を確保しなくてはいけない。
 彼は慌てて立ち上がり、何か目印はないかともう一度あたりを見渡して、遠くに立ち上る煙を見つけた。幸い、近くに都市があるようだ。しかも煙が上がるような施設、つまり工業がある都市だろう。


 自分の予想が間違っていることに、彼はすぐに気づいた。煙の出どころはあまりにも近い。少ししか歩かないうちに、彼は立ち上るその煙が、遠いから小さく見えるのではなく、規模がそもそも小さいのだと分かった。煙の出どころには、小さな村があるだけだったのだ。
 村の入り口らしきものが見えてくると、彼は頭を抱えそうになった。なんと小さな都市だろう。実際、それは都市ではなく村と言って差し支えなかった。村の周りは簡素な木の塀で囲われていて、害獣から村を守るように作られている。彼が頼りにしてきた煙は、村の中心部からいくつも立ち上っていて、どうみてもそれは家庭用のかまどから放出されたもののようだった。今時、いったいどこの家庭に薪を用いるかまどがあるというのだろうか?
 村の入り口に近づくと、彼は入り口から明るい茶色の髪の女の子が、彼とすれ違うようにして出てきたのに気付いた。見たところ12歳ぐらい、ちょうど中学校に入るくらいの幼い少女は、彼を見てそのライトブラウンの瞳を驚いたように瞬かせた。彼はその少女に声をかけようとして、一瞬言葉につまった。彼女の容姿は明らかに一般的な日本民族のそれではない。とりあえず英語なら通じるだろうか。もし通じなければ次の候補はスペイン語だが、残念なことに英語の他は大学の
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ