6. くすんだ指輪
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夫なら隼鷹の姿を見せてくれ。星がこぼれる音が聞きたい。
……だが飛鷹は、俺の姿を見た途端、眉間に皺を寄せ、顔つきを険しく歪ませた。
「見ちゃダメ!!!」
ドック内に、飛鷹のけたたましい怒号が唐突に響く。その声の大きさには俺だけでなく、ビス子や球磨……暁たちもびっくりしたようで、ビス子は目を見開いて飛鷹を振り返り、暁は飛鷹が怒号を上げた途端にビクッと身体を波打たせていた。
飛鷹が俺に『見るな』と言った理由が分かった。……一瞬だけ俺の視界に入った隼鷹の右腕は、痛々しく焼け爛れ、キレイだったはずの肌は黒く焦げていた。
「提督、後ろを向いて」
「……隼鷹は……大丈夫なのか……?」
「大丈夫。でも服がボロボロだから……だから後ろを向いて。絶対に隼鷹を見ちゃダメ」
こちらをキッと睨みつける飛鷹の迫力に押され、俺は2人に背を向けた。水面から上がり、艤装を外してドックに上がったらしい2人が、俺の背後を素通りする音が聞こえる。飛鷹の足音と、ズルズルという何かを引きずる音が俺の耳に届く。
違う。俺が聞きたい音はこれじゃない。俺が聞きたいのは、隼鷹からこぼれる星の音だ。こんな薄汚いズルズルという音じゃない。
「隼鷹……!!!」
「振り返らないで!!!」
振り向きたくて少しだけ首を左に向けたら、すぐに飛鷹が俺を制止した。慌てて首をもとに戻し、再び背後を見ないよう自制する。
「提督」
いつの間にか、俺の目の前に古鷹がいた。古鷹は俺の右手を温かい両手でしっかりと包み込み、力強くギュッと握ってくれる。
古鷹の顔を見た。金色に輝く古鷹の左目が、まっすぐに俺を見つめていた。
「私を見ていてください」
「だが……」
俺の目が再び左を向く。目の自制が効かない。俺の目が隼鷹を視界に捉えようと言う事を聞かない。
目に連動して後ろをふり向こうと動く俺の頭を、古鷹はガシッと押さえた。両手で俺のこめかみを押さえ、勝手に首が動かないようにまっすぐの状態で固定してくれた。
「提督、駄目です。私を見てください」
「隼鷹……ッ!!」
「大丈夫。隼鷹さんは大丈夫ですから」
「俺は何か……何かできないのか……ッ!!」
「後ろを振り向かないで私を見ていてください。それが提督に出来ることです」
俺のすぐ背後を通っている隼鷹の姿を捉えることが出来ない苦しみ……すぐそばに隼鷹がいるのに星がこぼれる音が聞こえない辛さに目が耐えられなくなってきたようで、自分の目に涙が溜まってきたのを自覚した。ボロボロと涙がこぼれてくる。頭が必死に隼鷹を求めて後ろを向こうともがく。
だが古鷹はそれを許さなかった。両手でしっかりと首を固定して、まっすぐに俺を見つめながら俺の頭を固定し続けた。
隼
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