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黒魔術師松本沙耶香 騎士篇
第二十五章

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「わかってはいたけれど」
「残念ですね」
「戦うしかないわね」
「はい、それでは」
「来るがいい」
 騎士も退かない、堂々として受けて立つ。
「命を賭けて戦おうぞ」
「卑怯未練はなしで」
「当然だ、神に誓って言う」
「貴方にとって絶対にものに」
「余は何があろうとも正々堂々と戦う」
 沙耶香と速水に対して言い切った。
「敗れたならばそれを認めよう」
「そう、それではね」
「私達もです」
 沙耶香と速水も応えた。
「ではこれからね」
「お互いに正面から戦いましょう」
「一つ言っておくわ、私は異教徒であり魔術師であり女の子も好きよ」
 沙耶香は自身のそうしたことを騎士にあらためて話した。
「貴方とは価値観が全く違うわ」
「それでもか」
「そうよ、戦う時は卑怯なことはしないわ」
 それは一切、というのだ。
「何があろうともね」
「私もです」
 速水も言う。
「やはり異教徒であり異教の術を使いますが」
「汝も卑怯はせぬ」
「そうです」
 こう騎士に約束した。
「それを誓いましょう」
「左様か」
「信じて頂けますか」
「汝等は確かに異端」
 騎士はこのことは譲らなかった。
「だが嘘をついている目ではない」
「おわかりですか」
「人は目でわかる」
 孟子にある言葉だ、だがそれを騎士も言ったのだ。
「その者がな」
「目は口程にですね」
「もっと言えば口に出さずともだ」
「目にはですか」
「そして仕草にもだ」
 そちらにもというのだ。
「出る、企む者にはそれがどうしても出るものだ」
「嘘もですね」
「出る、だが汝達の目にも仕草にもだ」
 そういったものにとだ、騎士は自分と正対する二人に話した。
「そうしたものは一切ない、だからだ」
「嘘ではない」
「このことを信じて頂けますか」
「そうだ、余も卑怯未練は行わぬ、そして敗れればだ」
 彼自身がだ、そうなった時はというのだ。
「大人しく眠りそしてだ」
「最後の審判までね」
「目覚めぬ、誓ってな」
「わかったわ、では眠ってもらうわ」
 沙耶香が騎士のその言葉を受けて返した。
「私達の勝利でね」
「そうしてみよ、では行くぞ」
 騎士は右手に持っている剣を己の顔の前に立てて置きそれを礼としてだった。二人に対して突進した。そうして。 
 その剣を縦横に振るう、沙耶香にも速水にもそれは襲ってきたが。
 二人共だ、斬られた筈が。
 真っ二つになったその瞬間に姿を消した、まるで霧の様に。そしてそれぞれ騎士の左右に出て言ったのだった。
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