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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十四話 決戦、ガイエスブルク(その4)
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しを避けた所為で損害は殆ど無い。しかしガイエスハーケンを使った事により味方の左翼は壊滅の危機から解放された。
今味方の左翼は後退しつつある敵を追って攻撃をかけている。敵は突破、混戦に持ち込めなかったことで一旦艦隊を後退させ仕切り直しをするようだ。しかしバラバラになった艦隊は連携が取れずこちらの攻撃に苦戦しながら後退している。
いっそエーリッヒをヘルダー子爵もろとも消滅させれば良かったか……。そうすれば敵の混乱は今の比ではなかったはずだ。
問題は右翼だ。メルカッツ副司令長官はガイエスハーケンが発射される前に後退を始めた。エーリッヒが回避行動を取った事で攻勢を取るのは無理だと判断したようだ。こちらは全軍で反撃を開始し、予備を使ってケスラー艦隊の側面を突こうとしているがまだ決定的な損害を与える事が出来ずにいる。
ケスラー艦隊は後退しながらクレメンツ艦隊と協力しグライフス総司令官、フォルゲン伯爵、ヴァルデック男爵を捌いている。やはり敵の撤退が早かった。その分だけ敵は余力を持って後退している。
「どうも上手く行きませんな、敵の側面を崩しきれない」
ブラウラー大佐が戦術コンピュータのモニターを見ながら話しかけてきた。大佐の表情は苦しげだ。
「……」
「側面ではなく後背に回らせた方が良かったかもしれません」
グライフス総司令官が何故側面を突かせたか、おそらくは側面を崩し半包囲を行う事で勝利を確定したかったのだろう。その方が敵に大きな損害を与える事が出来ると考えたのだ。そして予備を後方に送ればその時点で敵が後退する、戦果が不十分になる可能性があると考えた……。
貴族連合は寄せ集めだ、この一戦で勝敗を決める。その想いが総司令官の選択肢を縛ったのかもしれない。
「多少は時間がかかるかもしれません。しかしいずれは包囲できるはずです。それに味方は優勢に攻撃を仕掛けている」
沈黙した俺達を励ますかのようにガームリヒ中佐が声を出したがブラウラー大佐は頷かなかった。
「どうかな、メルカッツ副司令長官は少しずつだが戦列を右に移動しているようだ」
「右に?」
ブラウラー大佐の言葉に俺とガームリヒ中佐は戦術コンピュータのモニターを見た。モニターには彼我の状況が映っている。確かにメルカッツ副司令長官は艦隊を右翼へ移動させ、ケスラー艦隊は後退しながらフォルゲン伯爵、ヴァルデック男爵と正対しようとしている。これでは包囲どころか後方にも回れない。
上手く行かない、攻めきれない。今は有利だが何時までもその有利を維持できるはずもない。何処かで決定的な戦果を上げなければならないがその契機が見えない。俺もガームリヒ中佐も思わず溜息が出た。
「予備を後背に回しても上手く行かなかったかもしれない。勝機はむしろ左翼にあるかもしれません
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