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義理人情も迷惑
第四章
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「そうそう、周りを見て」
「そして自分も理解して」
「そうしてやってくれたら」
「本当に嬉しいから」
 こう本人に言うのだった。
「だからな」
「これからもそうしてね」
「義理人情は相手も理解すること」
「自分自身をわかったうえでだから」
「建さんもそうだろ」
「だからね」
「ほんまその通りじゃったわ」
 高倉建さんの映画をあらためて観ると、とだ。椎葉も言う。
「勉強になった」
「迷惑はかけないってことだ」
「それが義理人情の第一」
「高倉健さんみたいってことだな」
「そういえば建さんはじゃ」
 椎葉も考えて言った。
「人のこと考えてたわ」
「映画の役でもそうで」
「実際でもよね」
「だから周りも人も自分も見て考える」
「そして動くことが義理人情ってことね」
「情けだけじゃないっちゅうことじゃな」 
 今度はしみじみとした口調で言った椎葉だった。
「ほんまにそうじゃな」
「ああ、そういえば何かな」
「あんたの広島弁も板についてきたわね」
「これまでは建さんの真似位だったけれど」
「リアルの広島弁になってきたわよ」
「それだけ建さんに近付いたっちゅうことか」
 また考える顔になってだ、彼は言った。
「そういうことか」
「そうかもな」
「あんたそうしたこともわかって一皮剥けたのよ」
「そしてまた一歩高倉建さんに近付いた」
「それで広島弁も本来のそれになってきたのよ」
「そういうことか、それならじゃ」
 友人達の言葉を聞いてだ、椎葉はさらに言った。
「わしはこのままもっともっと義理人情を建さんみたいに大事にしていってじゃ」
「健さんになる」
「そうなっていくのね」
「高倉建さんみたいな人になる」
 義理人情、そして礼儀を大事にし謙虚でもある。彼の理想像になるというのだ。
「立派な駅員さんになるで」
「ああ、頑張れ」
「応援はしてあげるわ」
 友人達はその一皮剥けた彼にエールを送った、そして。
 彼は努力を重ね明治大学の相撲部に入部しそこから駅員になった、駅で彼はぽっぽ屋と呼ばれてだった。
 そのうえでだ、同僚達に言うのだった。
「高倉建さんみたいな立派な駅員さんになるんじゃ」
 映画の様にとだ、彼は理想を見据えながら希望通りの職業に就いてもまだ先を見ていた。駅長はその彼を見て年配の駅員に笑顔で話した。
「ああした人間こそがだね」
「はい、本当に伸びますね」
「そうしたタイプの一つだよ」
 まさにというのだ。
「ずっと理想像を追い求めて努力出来る」
「そうした人間は本当に伸びますね」
「彼ならなれるかもね」
「高倉建さんに」
「あの人は凄かった」
 映画俳優、ひいては人間としてとだ。駅長もこの偉大な映画俳優のことを思い出してそのうえで話した。

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