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星がこぼれる音を聞いたから
4. フランス料理とラーメンと餃子とビール
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声が待合室内に響いた。途端に周囲にクスクスという笑い声が聞こえ始める。

「ここだよ!」

 声が聞こえた方向を向いて、柏原司令官がそう声をかける。俺達の視線の先には……グレーのつややかなドレスを身にまとった……というより、なんだかドレスに着られてる感じがする色白の女の子が、ぴょんぴょん飛びながらこっちに手を降っていた。

「おー! そちらにおいででありますか!」
「ほら! はやくおいで!!」

 スカートの裾を持ち上げ、時々つっかえながらもこちらにパタパタとかけてきたその子は柏原司令官の横に並び、少し乱れた呼吸を丁寧に整えていた。柏原司令官は苦笑いを浮かべていたが、それでも彼女を見る目はとても優しい。

「紹介します。私の片腕として働いてくれてるあきつ丸です。……あきつ丸。こちらは海軍××鎮守府の佐伯タカヒロ提督殿と、その奥様の隼鷹殿だ」
「ハッ! 自分、特種船丙型、あきつ丸であります!」
「海軍××鎮守府、佐伯タカヒロです。よろしく」
「飛鷹型航空母艦の隼鷹です」

 さっきの柏原司令官と同じく握手をしようと俺が右手を差し出そうとしたその時。

「……?」
「……」

 右隣にいる隼鷹の左手が、俺の右手にスッと優しく添えられ、そして握られた。困った……これじゃ握手出来ないんだけど……

「あきつ丸……あきつ丸……」
「ハッ! な、なんでありましょうか将校殿?」
「手……握手、握手……」
「……ンハッ! し、失礼したであります!」

 柏原司令官に耳元でそう言われたあきつ丸さんは一瞬顔を赤く染め、そしてすぐにキリッとして俺に右手を差し出した。

 ……と同時に、隼鷹の左手が俺の右手から離れた。……ちょっと残念だなぁ……。

 あきつ丸さんと優しく握手を交わした後、柏原司令官の顔を見た。俺達と談笑していたときと比べて表情が少しやわらかい。

 あきつ丸さんは自身のことを『特種船丙型』と答えていた。ということは、俺たち海軍でいうところの艦娘みたいな存在なのだろうか。……そんな存在である彼女に向ける柏原司令官の表情はとても柔らかい。彼は彼女のことをきっと大切にしているのだろう。いい人だ。

 その後しばらく談笑した後、2人は『お互い楽しみましょう』という言葉を残し、俺達から離れていった。

「ああいう時は女性から握手の手を差し伸べるのが……」
「そ、そうでありましたか……」

 優しい2人の声でそんな言葉が聞こえてきた。だから隼鷹は俺の手を制止したのか……。

「そうだよ。男から女に握手を求めたらダメだからね」

 ここにきて妙に隼鷹の頼もしさが増した。でもそれ以上に……

「あんな感じであたしがフォローいれてくから。安心しな」
「じゃあずっと手を握っててくれよ」

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