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星がこぼれる音を聞いたから
4. フランス料理とラーメンと餃子とビール
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「もし困ったら、あたしを見な」

 晩餐会会場に到着し、受付を済ませた俺の右隣に立つ隼鷹は、周囲に聞こえないような小さな声でぽそりとこう言っていた。

「ん?」
「テーブルマナーだけじゃない。社交の場には色々なマナーやしきたりがある。もしそれが分からなくて困ったら、いいからあたしを見るんだ」

 隼鷹を見た。イヤリングを輝かせて優しく微笑んでいる隼鷹は、なんだか別世界の人のようにキレイだった。隼鷹が体を動かし、イヤリングが揺れる度、髪が静かに動く度、俺の耳には星がこぼれる音が届き続けていた。

「……」
「ん? どした?」
「……いや」

 つい目で追ってしまうことがバレるのが怖くて、慌てて視線を外す。会場では俺と同じく燕尾服を着た男性たちや、隼鷹みたいにキレイなドレスで着飾った女性たちが談笑していた。

「やあこんばんは」

 燕尾服をビシッと着こなした一人の青年が、俺たちに声をかけてきた。なぜか体中に緊張が走る。

「陸軍の○○要塞司令官、柏原ヨシユキです」

 俺たちに話しかけてきた男性……柏原司令官は、穏やかにそう言いながら手袋を外し、俺に握手を求めてきた。俺と同じぐらいの年齢に見えるのに、要塞の司令官なんてやってるのか……エリートなんだなー……なんてぼんやりと思いながら、その手を握り俺も自己紹介をした。

「海軍××鎮守府提督、佐伯タカヒロです」
「ああ……あなたが……」
「?」
「お噂はかねがね……提督、こちらのご婦人は……」
「ああ……俺……あ、いや、私のずい……妻です」
「……はじめまして。飛鷹型航空母艦の隼鷹と申します」
「ああ、艦娘の方なんですね。よろしく」

 柏原司令官に対し、静かに手を差し出す隼鷹。俺との握手を終わらせた柏原司令官は、隼鷹のその手をそっと優しく握っていた。

 ……あ、なんか隼鷹の目がこっち見て、ニコッて笑った。

「しかしケッコンしてるとなると、あなたは相当な猛者のようだ」
「そうでもありませんよ? 私はまだケッコンできる練度ではありませんし」
「そうなのですか? ……あー」

 手袋をつけ直した手を顎に当てて考え込んだ柏原司令官は、思いついたようにポンと手を叩いていた。

「なるほど。羨ましい限りです」
「ありがとうございます」
「司令官にはいらっしゃらないんですか?」
「いるにはいるのですが……」

 優しく微笑んでいる柏原司令官に対し、少しだけほっぺたを赤く染めた隼鷹がそう答えていた。なんだか2人の会話についていけない……。

「このご時世ですからね。私も早く結ばれたいのですが……」

 柏原司令官が何かを言いかけたときだった。

「将校どのー。どこにおいででありますかー?」

 そんな少し可愛げのある
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