第六章
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「これがね」
「勇気が出ない」
「そうだっていうのね」
「まあよくある話だけれどね」
「いざっていうのは」
「わかってるのに」
それでもと言う亜衣実だった。
「これが中々」
「じゃあ私達が見ているからね」
「早く行きなさい」
「私達も何処にいるか見てるから」
「行きなさいね」
「見ていてくれるの」
亜衣実は友人達に対して真剣な顔で問い返した。
「ラブレター渡す時を」
「そう、見守っていてあげるからね」
「勇気を出して行きなさい」
「清水の舞台から飛び降りる気持ちで」
「道頓堀に飛び込む気持ちでね」
阪神が優勝した時限定である。
「早く行きなさい」
「さあ、いいわね」
「前に進みなさい」
「勇気出して」
「じゃあ」
亜衣実もようやくだった、友人達に背中を押され。
そのうえで受付のところにいる勇斗に手紙を渡した、それで笑顔で友人達のところに帰って来て笑顔で言った。
「その場で言われたわ」
「あれっ、渡したその場で?」
「もう言われたの?」
「そうなの?」
「ええ、僕でよかったらって。手紙を読まないで」
そのうえでというのだ。
「言ってもらったわ」
「よかったじゃない、一気に進んで」
「この展開は私達も読んでなかったけれど」
「流石にね」
手紙を受け取ってもらえない場合も受け取って指定した告白の場で断られる場合も考えていた。ただしハッピーエンドの場合も考えてはいた。
しかしだ、それでもだったのだ。
「まさか」
「ここでいきなりとか」
「ちょっとないわよ」
「一段飛ばし?」
「いえ、二段じゃあいの?」
こう口々に話す、だがそれでもだった。
何はともあれ亜衣実は勇斗と交際することになった、本人にとっても友人達にもいいことであった。だが。
三ヶ月もするとだ、亜衣実は。
お洒落をしなくなり依然程ではないが干物モードになった、友人達は机に怠ける様に寝そべっている彼女に問うた。
「何で戻ってるのよ」
「別れたの?ひょっとして」
「それとも喧嘩でもしたの?」
「いえ、勇斗さんがね」
その彼がとだ、亜衣実はその干物状態で答えた。
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