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火宅
第六章
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「何であんなことをした!」
「パチンコで負けてむしゃくしゃしてたんじゃ」
 瓶田は悪びれず警察の取り調べに答えた。
「それで火を点けたんじゃ」
「それが理由になると思っているのか!」
「理由なんか知るか」
 最早返事にもなっていなかった。
「俺がすることに誰も文句言わせるか」
「こんな奴さっさと捕まって正解だな」
「全くだ」
 取り調べを行う警察も思うことだった、それで。
 瓶田は裁判で有罪となり刑務所に入ることになった、そのことまで聞いてだ。
 アルバイト先のスーパーに正社員として就職した一郎は兄弟達にだ、家でこんなことを言った。
「あの火事の時はな」
「ああ、まさかな」
「親父とお袋がな」
 相変わらずシェフをしている次郎と就活に入っている三郎が応えた。
「あそこまで息が合っていて」
「的確に動けるなんて」
「思わなかったわ」
 大学生になった美奈子も言った。
「いや、本当にね」
「そうよね」
 相変わらずの格好で美容師になった芙美子も言う。
「あんなに喧嘩ばかりしていたのに」
「あれが本当にな」
 実際にとだ、一郎は弟、妹達に応えた。
「驚いた」
「意外というか」
「それ以上でな」
「まさかあんなに息を合わせて動けるって」
「思いもしなかったわ」
「しかもな」
 さらのい言う一郎だった。
「次の日には、そして今もな」
「喧嘩ばかりだしな」
「やっぱり一日一回」
「恒例でやるし」
「言い合い殴り合いで」
「そんなことばかりしていてな」 
 だがそれでもというのだ。
「ああした時は息が合うとか」
「誰が思うんだ」
「誰も思わないよ」
「というか信じられなかったわ」
「あの時は」
「まさかな」
 ここでこんなことを言った一郎だった。
「よく言われる言葉だが喧嘩する程ってな」
「うちの親もか」
「そっちか?」
「そういうの?」
「だからあの時は一緒に動けたっていうの」
「それでずっと離婚も別居もしないのもな」
 毎日喧嘩をしていてもというのだ。
「そうした事情だからか」
「そういえばずっと一緒の部屋で寝てるしな」
「食事だって一緒で」
「買い物もよく二人で行くし」
「そうした時も喧嘩するけれど」
「ああ、だからな」
 そうしたものを見ればというのだ。
「うちの親父とお袋はな」
「喧嘩をする程、か」
「仲がいい」
「そういう間柄なの」
「そうなるのかしら」
「そうかもな、まあそこは二人にしかわからないか」
 一郎と磨子にしかだ。
「俺達でもな」
「そうかも知れないわね」
 芙美子も言う。
「夫婦のことはね」
「そうだな、しかしあの時はな」
「ええ、火事になりそうだったけれど」
「親父とお袋のお陰で助かったよ」

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