第五章
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「そこにあった」
「わかった、そっちに消火器持って行くからな」
「すぐに消さないとな」
「火の勢いは強いか」
「ちょっと急いだ方がいいな」
勢いがある、それでだ。
「だからな」
「わかった、じゃあすぐに行く」
「毛布も濡らしたわよ」
母親である磨子も言ってきた。
「消火器だけじゃなくてね」
「そっちも持って行くのか」
「毛布はお風呂で濡らしたから」
そこのシャワーを使ってというのだ。
「すぐに行くわ」
「母さん行くぞ」
「ええ、今から」
夫婦でも話してだ、そしてだった。
実際に二人でそれぞれ消火器と濡らした毛布を持って行ってだ、庭の火を消した。そうして全てを終えたのだった。
火が消えた直後に来た消防署の人達にも夫婦で事情を話した、二人で実に息の合った的確なものであった。
その説明を聞いてだ、消防署の人は深刻な顔で言った。
「大事に至らなくて何よりですが」
「それでもですね」
「庭に火の元があったということは」
「まず間違いなくです」
それこそというのだった。
「放火ですね」
「やっぱりそうですね」
「それですね」
「はい、警察にも連絡をして」
そしてというのだ。
「捜査をしてもらいます」
「放火犯を野放しにしてはいけません」
「大変なことになります」
「ですからこのことは」
「宜しくお願いします」
「わかっています」
消防署の人も確かな声で応えそしてだった。
すぐに実際に警察に連絡されてだった、程なく捜査が行われ近所のチンピラ瓶田和弘が逮捕された。丸坊主で猿の様な顔をした中学の時から悪事の限りを尽くしていたどうしようもない輩だ。
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