第二章
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「一体」
「はい、実は口と鼻はつながっています」
「そうだったのですか」
「そして手術が失敗しまして」
それでというのだ。
「王のお口とお鼻が一つになってしまいました」
「それはどうしてですか」
「ですから口と鼻はつながっています」
ダガンは侍従、そして沈黙している王に話した。
「それで顎の上の部分がです」
「そこがですか」
「手術の失敗で歯を抜いた穴と一緒になってしまいました」
「ではです」
ここまで聞いてだ、侍従は事情を察してダガンに問うた。
「食べたものが鼻にまで」
「至ってしまいます」
「そうなのですか」
「申し訳ありません」
「・・・・・・・・・」
王は無言だった、手振りだけでそれはよしとした。
そしてそのうえでだ、何かを書いて侍従にそれを渡した。すると侍従はダガンにこう伝えた。
「王から報酬があるとのことで」
「左様ですか」
「好きな額を言えとです」
「それでは」
王はダガンに気前よく報酬も渡した、こうして手術は終わった。
だが歯がなくなりだ、喋る言葉もこれまでより響きが悪くなり。
食べるものについてもだ、こうシェフに言った。
「柔らかいものを頼む」
「これまでよりも」
「そうだ、噛むことが出来なくなった」
それでというのだ。
「だからこれまでよりも遥かにな」
「柔らかいものをですね」
「頼む」
こう命じるのだった。
「是非な」
「それではシチュー等も」
「これまで以上に長く煮てだな」
「出させて頂きます」
「その様にな」
こうして王は食事は柔らかいものばかりになった、そして。
それだけでなくだ、王は食事を流し込むだけになってだった。
「何かだ」
「はい、これまで以上に」
「どうにもですね」
「お食事の量が増えましたね」
「そうなりましたね」
「噛むとだ」
王は周りの者達に話した。
「それで満腹感を得られるが」
「しかしですね」
「噛むことがなくなり」
「それで」
「そうだ、これまでよりも遥かに食べる様になった」
王はこれまでも大食であった、背はそれ程高くはないがそれでも食事の量はかなりのもので美食家としてだけでなく健啖家でも有名だった。
だがその王がだ、これまで以上になのだ。
「さもないと満腹感を得られない」
「今は、ですか」
「歯を抜かれた後は」
「そしてだ、食事の時にだ」
さらに言う王だった。
「食べたものが鼻から出る様になった」
「お口とお鼻がつながってしまったので」
「そのせいで」
「そうなった」
困っているとは言わなかった、王としての誇り故に。
「今はな」
「それはまた」
「どうにも」
「さらにどうもだ」
王の言葉は続いた。
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