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ライブラリー=ラブ
第二章

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「まだこれといって考えてないわ」
「そうなの」
「特にね」
 こう真礼に答えた。
「今はね」
「興味ないとか?」
「そこまではいかないけれど」
「考えてないのね」
「そうなの、どうした人とお付き合いしたいかとか」
「恋愛は、なのね」
「考えられないわ」
 真礼に答えた。
「どうにも」
「そう、ただね」
「ただ?」
「そう言っていても恋愛ははじまるみたいだか」
「自分が身構えとかしていなくても」
「そう、それでもね」
 恋愛、それはというのだ。
「いきなりはじまったりする場合もあるみたいよ」
「いきなり、ね」
「ロシア文学でもそうじゃないの?」
「そういえばそうね、男性視点のが多いけれど」
 それでもというのだ。
「急にはじまったりするわね」
「きっかけ一つで、よね」
「ツルゲーネフのはつ恋とかね」
 ただしこの作品は悲しい結末である、初恋というものはえてしてそうしたものだというツルゲーネフの考えが影響しているのだろうか。
「きっかけ一つではじまるわ」
「それじゃあね」
「私の場合も」
「ましてや相手がいるものだし」
「相手ね」
「男の子の方から」
「それなら誰かしら」
 寿美礼は真礼に首を傾げさせて言った。
「私の恋愛の相手は」
「そう思うと楽しみ?」
「いや、そう言われても」
「答えられない?」
「考えてもいないから」
 だからというのだ。
「ちょっとね」
「そうなのね」
「どんなものかしらね」
 今の寿美礼はこう言うだけだった、恋愛も書かれるロシア文学を読んでいてもその恋愛のことまでは考えていなかった、というか考えられなかった。 
 だがその寿美礼を図書館でふと見た少年がいた、名前を湖東慎という。
 高校生で細い癖のある髪の毛をショートにしていて少し茶色に脱色している、顎がしっかりした細面で眉は濃く普通の太さだ。
 鼻の形もしっかりしていて唇はピンクで微笑んでいる、目は切れ長で奥二重だ。
 背は一七〇程で細い、見れば寿美礼達と同じ学校の制服である。
 その彼がだ、図書館で真礼と話をしている寿美礼を見て一緒にいるクラスメイト達に言った。
「あの娘誰だ?」
「ええと、片方は三組の夜空でな」
「もう一人は四組の夢野じゃないか?」
 クラスメイト達はこう慎に答えた。
「二人共演劇部でな」
「夢野は脚本も書いてるってな」
「ああ、うちの学校の娘か」
 寿美礼を見つつ言うのだった。
「ああした娘いるんだ」
「あれっ、御前夢野知らなかったのか」
「結構有名人だぞあの娘」
「ロシア文学通でな」
「図書委員でいつも本の紹介もしてるし」
「俺あまり図書館行かないからな」
 だからとだ、慎はクラスメイト達に答えた。
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