第7話
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ている。それを周りに見せたことにすら、あいつは苦しんでいる」
「なんでよ?吐き出した方が楽になれるわ!!」
「瑠璃、あいつは何者だ?」
「遊矢は遊矢じゃない!!何を言い出すの」
「そうだ、奴は遊矢だ。そして遊矢は自他共認める一流のエンターテイナー。誰かを楽しませ、喜ばせるのがエンターテイナーだ。それ以外の感情を持たせてしまうのは自分の否定だ。先程の零児に掴みかかる行為をオレ達に見せてしまったことすら、あいつは苦しんでいるんだ」
「なによそれ。それじゃあ遊矢はずっと苦しむだけじゃない!!どうやったら苦しみから開放されるっていうの」
「もう忘れてしまったのか?遊矢は、遊矢のエンタメデュエルで楽しみ、喜ぶ者達を見るのが一番好きなのを。だが、それもしばらくは出来ない。耐えるしかない。遊矢も、オレ達も」
お兄ちゃんの私の腕を掴んでいるのとは逆の手から血が落ちる。強く握りしめすぎて切れたのだろう。それを見てしまったら、もう動けなかった。やっぱり私は柚子が大嫌いだ。ここまで遊矢に思われているのだから。私が同じような目にあっても、必死に探そうとするだけであそこまで取り乱すことはないはずだ。それが羨ましくて、憎い。その心にカードが応え、生み出される。
ゴーグルをかけてヒッポに跨り舞網の夜空を駆ける。
「なあ、ヒッポ。どうしていつもこうなんだろうな。なんでいつも力が足りないんだろうな。何かが起こって、それをその場で対応できずに、対処療法しか出来ない。父さんが居なくなった時も、ハートランドの時も、あの親子達の時も、そして、柚子」
「ヒッポー」
「オレのエンタメデュエルじゃあ、守れないのかな。誰かが泣かないようには出来ないのかな」
オレのエンタメデュエルが間違っているとは思わない。だけど、その所為で何かを取りこぼしてしまっている。何処か、流されてしまっている自分がいる。その先に嫌な予感が、破滅の未来が待っているように感じているのに。
「ヒッポ、オレ、自分が情けなくて、悔しくて、怖いよ」
ゴーグル内に涙が溜まる。それを誰かに見せる訳にはいかない。それが一流のエンターテイナーだから。
「ヒッポヒッポ」
「ありがとう、ヒッポ。慰めてくれて」
ヒッポがオレを励ましてくれているが、今だけは泣かせてくれ。弱い所は誰にも見られたくないんだ。久しぶりだよ、泣くなんてさ。まだ幼い頃、そう、デュエルを始めた頃、弱いからと捨てられてしまったカード達を拾い集めていた頃以来か。どうやってもデュエルに勝てなくて、それでもなんとかしてカード達を使ってあげたくて、負けては泣いていた。それを慰めてくれて、一緒にカード達を輝かせるためのコンボを考えてくれたのが柚子だった。そ
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