第三章
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そのうえで練習をするが。
「細い身体やけど」
「柔らかいしバネもあるし」
「案外スタミナもある」
「ただ甲子園の予選で決勝までいったわけちゃうな」
「素材はええわ」
「元々な」
「ええ感じや」
「コントロールもええしな」
「ストレートもノビがある」
スピードはそれ程でもなかったがだ。
「変化球もカーブとシュート、シンカーか」
「今で三つか」
「低めのボールも生きてるし」
「後は怪我をせんだけやな」
「それに注意することやな」
キャンプを観に来たファン達は好調に練習をする水原を観て言った、左のアンダースローのボールは彼等が見る限り万全だった。だが。
投手コーチは水原にだ、ブルペンでこう言った。
「左のアンダースローは右バッターには投げるところが丸見えだ」
「だからですね」
「そうだ、圧倒的に不利だ」
このことを水原に話した。
「それは注意せえ」
「はい、そういえばこれまで」
水原も高校時代のことを思い出して言った。
「左バッターよりもです」
「右バッターの方にだな」
「打たれていました」
「それだ、どうして右バッターを抑えるか」
「それが大事ですか」
「だから相手の胸元をえぐれ」
右バッターのそれをというのだ。
「内角をギリギリにな、そしてだ」
「そして、ですか」
「相手をそれでのけぞらせてだ」
「そこからですか」
「外角で泳がせて打ち取れ」
「シュートやシンカーで」
「御前はもうこの二つの球種を持っているからな」
だからだというのだ。
「まずはな」
「右バッターの内角ですね」
「そこを攻めろ」
まずはというのだ。
「いいな」
「わかりました、強気にですね」
「どんどん相手の内角を攻めろ」
右バッターのそこをというのだ。
「そしてどんどん走れ」
「走ってですか」
「御前はストッパーになるからな、ストッパーとして長くやりたいなら」
それならばというのだ。
「スタミナが必要だ」
「連投が基本だからですね」
「そうだ、怪我をしない様にストレッチも欠かすな」
身体をほぐしておけというのだ。
「風呂でもマッサージでもな」
「ほぐすんですね」
「身体は硬くさせるな」
そこは絶対にというのだ。
「怪我をしない為にな、そして負けるな」
「相手に」
「誰にもだ、どんなバッターも確実に完全に抑える」
それこそというのだ。
「その意気でいつもいけ」
「投げる時は」
「勝負だからな、そしてストレスを感じたら」
その時はというと。
「いい感じで解消しろ」
「それも大事ですか」
「御前の趣味でな」
「というとお料理やお裁縫も」
「いいぞ、ストレスを感じたらしてな」
自分の趣味、好きなことをというのだ。
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