第一章
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ピンクのサウスポー
阪神タイガースはとにかくここぞという時に負けるチームだ、これは最早二リーグ制になった時からの伝統であろうか。
そして結構色々と選手の獲得でおかしなことをするのも伝統だろうか。
記者達もファン達もこのシーズンの阪神のドラフトの噂を聞いて首を傾げさせていた。
「秘密？」
「あっと驚く選手を獲得する？」
「誰を獲得するんだ？」
「Ｗ大の鶏谷か？」
「いや、Ｋ大の村岡だろ」
「Ｎ高の掛田じゃないのか？」
「Ｏ高の江冬だろ」
この辺りの大学で活躍したか超高校級の球児かと言われていた、だが。
どの選手も阪神を希望していたがだ、何でもだった。
「その面々は二位以降か」
「全員一位でもおかしくないがな」
「ああ、村岡も江冬も凄い速球投げるしな」
「鶏谷の守備凄いぞ」
「掛田はいいスラッガーになるぞ」
「助っ人もバード獲得するんだろ」
「オクラホマからな」
助っ人の話もされた。
「とんでもないバッターらしいしな」
「バードが主砲か」
「あと広島からレフトの金田を補強か」
「今年の阪神の補強は凄いな」
「それで一位は誰だ？」
ドラフトのそれはというのだ。
「村岡と江冬は先発タイプだろ」
「どっちもスタミナあるしな」
「じゃあストッパーか」
「誰なんだ」
「その候補を獲得するのか」
首を傾げさせて言うのだった、とにかくだ。
阪神のドラフト一位が誰なのかわからなかった、それはまさにドラフトのその時まで不明だった。誰もが阪神の一位指名は誰か注目していた。
そのドラフト一位はというと。
「八条学園高等部、水原和佳奈」
「水原！？」
「八条学園のか！？」
「確か甲子園の予選の決勝まで投げていた」
「あの水原か」
名前は知られていた、だが。
その水原についてだ、誰もが言った。
「水原は女だぞ」
「女の子だぞ」
「その水原を獲得！？」
「しかもドラフト一位で」
「阪神のフロントは何を考えているんだ」
「最近変なことをしなくなったと思ったら」
伝説になっている小山と山内の交換トレード、江夏や田渕の放出、グリーンウェルを代表とする助っ人の獲得等だ。
それがなくなった、そう思えば。
「女の子のドラフト一位指名か」
「またとんでもないことしたな」
「そりゃ激戦区兵庫で決勝まで進んだがな」
「その間防御率は一点台だったな」
「実力はあるが」
「女の子だぞ」
「十八歳の女の子だぞ」
その水原の獲得はというのだ。
「どうなんだ」
「女の子の獲得はもう出来るが」
プロ野球の協定ではそうなっている。
「しかしな」
「はじめてでな」
「高卒だからな」
「せめて大学で見てもよかったんじゃないか？」
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