第一章
[2]次話
どっちも無理
早川智和は今悩んでいた、デート中に目の前でレストランの食事を楽しんでいる恋人の柳瀬美由紀を見てそのうえでだ。
そしてだ、ラム肉を料理したメインディッシュを食べている恋人に問うた。
「これからどうするつもりだ?」
「どうするって?」
「ほら、映画館にも行って今はディナーだろ」
奮発してフランス料理のそれに行っている、智和は丸い鼻を持つ面長の顔を美由紀に向けつつそのうえで彼女に問うた。髪の毛は短く刈って整えている。職業は普通のサラリーマンだ。運送会社で経理をしている。
「その後は」
「後は、ね」
「わかるだろ」
「言うまでもないわね」
美由紀もこう返す。黒髪をウェーブをかけて伸ばした面長の顔で顎はしっかりとした感じだ。唇は薄いが口は大きめだ。眉はやや濃い感じで目の光は強くはっきりしたもので背は一五六程だ。膝までのタイトスカートの白いスーツで身体を覆っている。黒っぽいスーツを着ている智和とは着ている服の色が対称的である。
「もう」
「そういうことで」
「説明不要ね」
「君の部屋では」
「駄目よ」
即座にだった、美由紀は智和に返した。フォークとナイフを使う手を止めて。
「今日は」
「しょっちゅう行ってる仲だろ」
交際しているからこそとだ、智和は問うた。彼もまたラム料理を食べている。
「それは」
「それでも今日はよ」
「駄目だっていうんだ」
「そうよ」
絶対にという返事だった、またしても。
「今日はね」
「どうしてなんだい?」
「理由は言わないわ」
言えないのではなくこちらだった。
「聞いても言わないから」
「それはまた怪しいな」
「別に何でもないから」
「何でもない理由?」
「そうよ、けれどとにかく言わないから」
またしても絶対にという返事だった。
「本当にね、だからね」
「今日は俺の部屋で」
「夜過ごさない?」
「駄目だよ」
智和も智和でこう言った。
「俺の部屋は」
「あれっ、どうしてなの?」
「理由は言えないさ」
智和もまたこう言うのだった。
「けれどそれでもだよ」
「今日の貴方のお部屋は」
「俺以外誰も入ったら駄目だよ」
「理由は言えないのね」
「君と同じだよ」
「言えないっていうのね」
「そうだよ、言わないから」
美由紀の言葉と違う範囲は声の違い位だった、言わんとしていることは彼女と何ら変わることがなかった。
「絶対に」
「そうなのね」
「とにかく今夜は駄目だから」
「普段はいいのに」
「今夜は駄目だから」
「じゃあ今夜はどうするの?」
「どうしたらいいかというと」
智和は少し考えた、そして。
少し考えてだ、美由紀にこう言ったのだった。
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