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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十三話 決戦、ガイエスブルク(その3)
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3月 3日   20:30 ガイエスブルク要塞   アントン・フェルナー


「准将、敵の攻撃が」
「分かっている。主砲の発射準備は」
「いつでも」
ガームリヒ中佐が表情を強張らせている。ブラウラー大佐の表情も硬い、俺もおそらく似たようなものだろう。

味方がガイエスハーケンの射程内に入った頃から敵右翼の攻撃が一段と激しさを増した。おそらく混戦に持ち込みこちらにガイエスハーケンを撃たせないようにしようとしているのだろう。状況は良くない、このままでは突破されかねない。

「准将、予定よりも早く主砲を撃つ事になるかもしれません」
「そうですね、大佐。しかしこちらの狙いは予備を使って敵の左翼を攻撃する事です。問題はないでしょう」

俺の言葉にブラウラー大佐とガームリヒ中佐は頷いた。そう、問題はないのだ。少しぐらい敵の攻撃が強まったからと言って焦る必要は無い。

「ブラウンシュバイク公、グライフス総司令官より通信です。スクリーンに映します」
オペレータの声にスクリーンを見た。スクリーンには緊張した面持ちの公とグライフス総司令官の顔があった。

『敵の攻撃が激しくなった。強引に混戦に持ち込もうとしている』
「……」
『フェルナー准将、敵はもう直ぐガイエスハーケンの射程内に入ってくる。その時点でガイエスハーケンで敵を攻撃してくれ』
グライフス総司令官の表情は苦い。予想以上の敵の攻撃に苦しんでいる。

「もう少し引き寄せる事は出来ませんか。その方が敵を混乱させ易い、逆襲し易いと思うのですが」
俺の意見を却下したのはグライフス総司令官ではなくブラウンシュバイク公だった。

『残念だが無理だ。カルナップ男爵もハイルマン子爵も耐えかねている。先程から予備を出せと悲鳴のような救援要請が届いているのだ』
公も総司令官も表情は苦しい。追い詰められているのだ。予備を出せば敵の左翼を攻撃できない。出さなければ自陣が崩壊する、秩序だった行動などできなくなるだろう。

「分かりました。敵がガイエスハーケンの射程内に入った時点で攻撃します」
俺の言葉に公とグライフス総司令官が頷いた。
『うむ、頼むぞフェルナー。それから間違っても味方を撃たないでくれ』
「はっ」



帝国暦 488年  3月 3日  21:00  グライフス艦隊旗艦   ヴィスバーデン    セバスチャン・フォン・グライフス


「間も無く敵右翼、ガイエスハーケンの射程内に入ります」
「ガイエスブルク要塞より入電です。十分前」
オペレータの言葉に艦橋の空気は一気に緊張を高めた。ただしその緊張感には不安のほかに希望も有るだろう。皆の表情には期待するような色が有る。

「残り五分で左翼に退避命令を出せ。間違えるなよ、五分前だ」
「はっ」
私が
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