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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十三話 決戦、ガイエスブルク(その3)
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ケンの射程内に入りました」
ワルトハイムが俺に注意を促がした。敵は左翼に続いて右翼までガイエスハーケンの射程内に入った。ようやく此処まで来た、来てしまったと言うべきかな。もう引き返せん、連中も指示を待っている……。
「全艦隊に命令、ワルキューレは汝の勇気を愛せり」
「はっ」
ワルトハイムは返事をするとオペレータに指示を出した。オペレータが復唱して命令を確認している。この命令が届くのと同時に戦局は動き始めるだろう。”ワルキューレは汝の勇気を愛せり”か……。確かにこれからは勇気と忍耐が試される事になる。
それにしても敵は予想外にしぶとい。既に戦闘が始まって五時間が経っている。俺としてはもっと早く敵をガイエスハーケンの射程内に押し込めると思っていた。長くうんざりするような時間だったが、これからは忙しくなるはずだ。ココアを飲んでいるような余裕はなくなるだろう。
こちらの右翼は未だ実力の全てを出してはいない。ビッテンフェルトとケンプはせいぜい七割から八割程度の力で攻撃している。そうでもなければとっくに敵を圧倒していたはずだ。
彼らの正面にいるのはカルナップ男爵、ハイルマン子爵だ。実戦経験など無い彼らにとっては手加減した攻撃でも防ぐのが精一杯だっただろう。そんな彼らに本気になった二人の攻撃を耐えられるはずが無い。
面倒な事だ、手加減しながら敵を攻めるなど……。しかし最初から全力で攻めれば敵はこちらの勢いに怯えて要塞付近に撤退し出てこなくなる恐れがある。それでは内乱の早期鎮圧は望めない。何とか耐えられる、ガイエスハーケンの射程内に引きずり込める、そう思わせる必要があった。
まあそれでも左翼部隊よりはましだろう。こちらが全力で攻めていると思わせるために左翼には手を抜いて攻めろといったのだ。そのため指揮権も分けた。右翼は俺が、左翼はメルカッツが。俺が全力で攻め、メルカッツは慎重に攻めている。敵がそう誤解してくれれば良い。
厄介なのはクライストとヴァルテンベルクだ。こいつらは実戦経験が豊富だから中途半端な攻撃では見破られる恐れがある。だからクライストにはファーレンハイトとミュラー、ヴァルテンベルクにはメックリンガーとレンネンカンプをぶつけた。二個艦隊を相手にしているのだ、手一杯で不審に思う暇もなかっただろう。
グライフスはこっちをもっと要塞に引き寄せたいと考えているだろう。今はまだ可能だと考えているはずだ。だがもう直ぐそれは不可能だと理解する。そのときグライフスはどうするか……。
耐えようとすれば粉砕される、逃げれば自陣が崩れ敗戦が決まる、となればグライフスはガイエスハーケンを使って形勢を挽回せざるを得ない。予定よりも早く要塞主砲を撃つ事になる。当然こちらも射程外に逃げ易くなる……。
帝国暦 488年
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