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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十三話 決戦、ガイエスブルク(その3)
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ーンにはブラウンシュバイク公、グライフス総司令官の姿があった。二人とも表情には疲労の色が有った。だが総司令官の口調はしっかりとしているし、視線にも揺るぎは無い。大丈夫だ、総司令官は落ち着いている。

『その後また左翼を後退させ、敵をガイエスハーケンの射程内に誘い込む。そして機を見て左翼を天頂、天底方向に退避させる』
「右翼は後退させないのですか?」

俺の問いにグライフス総司令官は頷いた。
『ガイエスハーケンで狙うのは敵の右翼だ。幸い右翼にはヴァレンシュタイン司令長官も居る。一撃を与えれば敵は混乱する、それに乗じて総反撃だ』
「分かりました」

「敵は上手く引っかかるでしょうか? こちらが退避すればそれに合わせて退避するかもしれませんが?」
『構わない。最初から敵がそれに引っかかるとは思っていない』

総司令官の言葉に思わず俺はブラウラー大佐、ガームリヒ中佐と顔を見合わせた。二人も訝しげな表情をしている。スクリーンに映る公も同じだ。
「どういうことでしょう? それでは敵に効果的な打撃を与えられませんが」

『ガイエスハーケンは囮だ。極端な事を言えば敵を一隻も撃沈できなくても構わない。敵が退避した後、ガイエスハーケンが放たれた後に予備を敵の左翼の側面に送る。狙いはケスラー、クレメンツ艦隊の撃滅だ。こちらの正面からの攻撃と連動すれば敵の左翼を壊滅状態に追い込む事が出来るだろう』
「!」

『なるほど、壊滅状態は無理でもケスラー、クレメンツ艦隊を撃破できれば敵の中央を突破できる! そういうことか』
ブラウンシュバイク公の興奮気味の言葉にグライフス総司令官は微かに笑みを見せた。

『敵の左翼は混乱するはずだ。当然だがガイエスハーケンを回避した右翼も慌てるだろう。味方の左翼はそこを叩く。全軍で総反撃、これからが本当の勝負だ』
「はっ」

ガイエスハーケンは囮か、どうやらグライフス総司令官は第六次イゼルローン要塞攻防戦のエーリッヒに倣おうという事らしい。総司令官は艦隊決戦で勝利を掴もうとしている。エーリッヒ達がガイエスハーケンを回避すれば当然だがメルカッツ副司令長官は独力でこちらの攻撃を防がなければならない。

問題は敵の予備だろう、ロイエンタール、ミッターマイヤー。だがこちらの予備のほうが距離から見てケスラー、クレメンツ艦隊に先に喰らいつく。ケスラー、クレメンツが崩れればメルカッツ副司令長官も堪えきれないはずだ。十分過ぎるほど勝算は有る。先程まで不安そうだったガームリヒ中佐も今は顔を紅潮させている。グライフス総司令官の言う通りだ、エーリッヒ、これからが本当の勝負だ。



帝国暦 488年  3月 3日  20:00  帝国軍総旗艦 ロキ エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


「閣下、敵右翼、ガイエスハー
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