第一章
[2]次話
覚悟の秋
春から夏になり秋になった、その秋の入口である九月になって。
私はまだ暑いながらもだ、彼とデートをしている時に寄った喫茶店の中で真剣な面持ちでこう告げた。
「秋になったから」
「秋に?」
「したいことがあるけれど」
「一体何?」
私の真剣な顔での言葉にだ、彼は怪訝な顔で問い返した。
「したいことって」
「大事なことよ」
「大事な」
「まだ暑いけれど」
それでもともだ、私は彼に言った。
「秋になったらってずっと思ってたの」
「何か凄いことみたいだね」
「私としてはね」
そうだとだ、彼に答えた。
「そうよ」
「秋って言われても」
彼は自分が注文したアイスコーヒーをストローで飲みながら応えた。まだ暑いので彼はホットコーヒーじゃなかった。私もアイスレモンティーだ。
「今はね」
「まだ夏ね」
「九月になったばかりだから」
どうにもという返事だった。
「だからね」
「ぴんとこないのね」
「うん、けれど暦的には」
「秋になったわね」
「そうだね」
彼はこのことには頷いた。
「そうなったね」
「だからね」
「それでなんだ」
「今言ったの」
「そうだったんだ」
「そうよ」
自分が注文したアイスティーを飲みながら答えた、氷でよく冷えていて甘さを引き立てていて実に美味しい。
「もっと涼しくなってからね」
「それをするんだ」
「そのつもりなの」
こう彼に言った。
「秋が深くなったら」
「何か重大な決意なんだね」
「秋だからこそよ」
「そうしたものなんだね」
「そう、十月位ね」
具体的な時期についてだ、私は彼に話した。
「その半ば位か十一月のはじめか」
「秋の真っ只中だね」
「その時にするわ」
「わかったよ、それじゃあね」
「ええ、一緒にね」
「僕もなんだね」
「そう、一緒にね」
彼にここでも真剣な顔で言った、そしてだった。
「その時も」
「俺も一緒なんだ」
「駄目かしら」
「いや、何をするかわからないけれど」
今一つ押しに弱くて流されるところのある彼はこう私に返した。
「それじゃあね」
「ええ、その時もね」
「一緒にだね」
「そうしましょう」
「それじゃあね、しかしね」
ここでだ、彼は。
窓の外の景色を見てだ、喫茶店の向こう側の道を見てこんなことを言った。
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