第7章 聖戦
第156話 御使い
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濃い茶系。しかし、その中には強き意志を感じさせる光が宿る。
その容姿を構成する線は繊細にして優美。
肌は……象牙色。この世界の基本的な美人。白色人種系の肌の色と言うよりも、どちらかと言うとアジア系の色白の女性の雰囲気。但し、故にその肌の美しさや肌理の細かさに於いてはタバサやイザベラと比べてもワンランク上だと思われる。
確かにハルヒが持っている自己主張の激しい、他者に強く働き掛けるような美人ではないが、何処か憂いを含んだ眼差しや物静かで清楚な雰囲気を持つ女性。……と表現すべきか。
しかし、普段は少女の容姿を持っている彼女が、何故だか今は普段よりも少し年上のような気がするのだが……。
真っ直ぐに覗き込んで来る彼女の瞳を右目でのみ見つめ返しながら、そう考える俺。もっとも女性と言うのは、服装やその他の要素で多少、大人びて見えるモノでもあるので……。
そう。現在、このガリアで聖スリーズと呼ばれているのは、俺の式神たちが建てまくったノートルダム寺院に置かれた聖スリーズの像と同じ容姿を持つ女性。更に言うと、多くの人間の枕元に立ち、此度の聖戦が神の御意志に反して居る……と伝えている女性でもある。
但し、俺はその像のモデルとなった彼女の本当の……今回の生での名前を知っている。
精霊女王ティターニア。そう考える俺と同時に、それまで俺の瞳を覗き込んで居た彼女がまるで意を決したかのように小さく首肯いて見せる。
そして……。
そして、急接近して来た彼女の美貌に思わず、瞳を閉じて仕舞う俺。次の瞬間、左目の目蓋に感じる少し湿った……柔らかな感触。そして感じる春の香り。
成るほど。女神ではないが、聖女のくちづけと言う事か。
取り乱す事もなく、冷静な頭脳でそう考えを回らせる俺。もっとも、これは女性に近寄られる事に慣れたから、などと言うリア充乙的な理由などではなく、おそらく今の俺がガリア王太子ルイのペルソナを演じているからだと思う。
このタイミングで慌てたり、接近して来る彼女のくちびるを遮ったりすると、今まで築き上げてきたイメージ。産まれて来た時から持つ自然な雰囲気と風格。何事にも揺るがない泰然自若。高貴なる者が持つべき品格と言うヤツが一瞬にして崩壊して仕舞う恐れがある……と考えたから鷹揚に構えていただけ。流石に慌て、狼狽える様を衆人環視の中で晒して仕舞うのはちょっとばかり不味いでしょう。
そう考えている間に、心臓がひとつ鼓動を打つ度に激しく走っていた痛みが何時の間にか消え、鬱陶しいぐらいに溢れ出ていた紅い液体も納まっていた。
そして――
「ありがとうございます、聖スリーズ」
最後に俺の頬に残った血の跡をふき取り、一歩後ろに下がった聖スリーズこと、妖精女王ティターニアに対して感謝の言葉を口にして置く俺
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