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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第156話 御使い
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事もない魔術回路が乱舞し、大理石の床には見た事もない召喚円が俺の血によって描き出される。
 もう、正直に言ってお腹一杯の気分の所に、ラグドリアン湖の精霊の口から「王太子が大いなる意志に選ばれた」の言葉。

 こりゃ、簡単に動き出せないはずだわ。

 見た目が派手な演出に、怒涛の勢いで発生するイベントの連発。これで、この召喚の儀式の正統性と神秘性を高めようと言う腹なのでしょう。
 迂闊に治癒の仙術など行使しなくて良かった。

 そう改めて考えた瞬間、周囲の気配が変わった。
 生成されては集束を繰り返していた魔術回路が俺とタバサを中心にして輪を描くように空中を飛びまわり始めたのだ。
 陽光ではなく、まして、蛍光灯の造り出した人工の光などではない、活性化した精霊が放つ光。
 そう、その様はまるで長く光の尾を引く流星の如き様。その尾のひとつひとつがより大きな魔術回路を形成して行く。

 ただ……。
 ただ、そもそもこの現象は初めて。確かに前世でもこの衆人環視の中での再召喚と契約は経験している。しかし、その時に発生したのは左目から血が溢れると言う、オーディンの伝承に繋がる事象が発生したのみ。
 もっとも、今回の人生の()()はおそらく人為的な物だと思うのだが。先ほどのタバサの言葉から類推するのなら。

 最早霊力的に言って臨界に達しているのは明らか。おそらく、外側から今の俺とタバサの姿を肉眼で捉える事は不可能でしょう。それほど濃密な霊気に周囲が覆われている状態。
 そう考えた瞬間、それまでよりも強い光に包まれる俺たち二人。流石にもう瞳を開けて置く事さえ出来ないレベル。

 一瞬、瞳を閉じて仕舞う俺。そして、同時に感じる新たなる霊力の動き。
 これは――何者かが召喚されたのか?

「……聖スリーズ?」

 ゆっくりと開く瞳。その途中に聞こえる誰かの呟き。
 ……成るほど、そう言う事か。目の前に新たに現われた人の気配を感じながら、そう納得したように考える俺。
 それならば――

「良く戻りましたね。幸運をもたらせる者、光輝の御子よ」

 状況が理解出来ると同時に、タバサに抱き寄せられていた体勢から一度立ち上がり、そして再び片膝を付く騎士としての礼の形を取る俺。
 まるで計算され尽くされたかのような形でマントが翻り、その一瞬後には、確かに俺の正面に居たはずのタバサが俺の右斜め後ろにて同じように片膝を付く礼の形を取っていた。
 但し、その間も相変わらず左の瞳からは少しずつあふれ出し続ける紅き生命の源。

「先ずは祝福を」

 一歩、歩み寄りながら頭を垂れた俺の頬に手を当て、彼女の方向へと顔を向けさせる聖スリーズ……と評された女性。
 腰まで届こうかと言う艶やかな黒絹。優しげな瞳の色もかなり
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