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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第156話 御使い
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上げる訳でもなければ、誰もこの場所に近寄って来る気配すら感じない。
 更に感じる異常な事態。確かに俺の気が活性化している現在の状態……一般人から見ても現在の俺は後光を背負うような状態だと思うので、普段の同じような状態の時と比べてそれほど違和感があると言う訳でもないのだが、俺の周囲に存在している精霊たちが異様に活性化している。

 まるで今現在、何か巨大な術式を行使して居る最中のような――

「――もう少しで召喚円が完成する」
「我が主人、ルイス・ドーファンド・ガリアよ」

 耳元で囁かれるタバサの日本語に重なる、良く通るガリア共通語。
 普段通り、抑揚に乏しいタバサの声と、普段とは少し違うラグドリアン湖の元精霊。湖の乙女の冷たく透明な声。

 しかし……召喚円?

「あなたは我が父たる大いなる意志から選ばれた」

 いや、普段はあなたとしか呼ばない彼女、湖の乙女が俺の名前――。それも、ガリアの王太子の影武者の俺に与えられた偽名を呼ぶと言う事は、これは私的な呼び掛けなどではなく、公的な物。
 あまりの激痛に思わず閉じて仕舞って居た目蓋の内、直接霊障の発生していない右目の方を開く俺。

 その時の周囲の様子は――

 俺を優しく抱き留めるタバサ。しかし、思ったほどに俺の血潮が彼女の白い衣装を汚している訳ではなかった。
 左目からは相変わらず、ヒタリ、ヒタリとあらゆるモノを濡らす紅き生命の源が溢れだし続け、閉じた瞳を覆った左手の隙間から床へと落ちて行く。
 しかし――
 床に落ちた紅い液体が瞳で見ても分かる程度に動いていた。そう、ゆっくり、ゆっくりと。しかし確実に進み行く紅き線。俺の身体から失われたにしては妙に多い紅い液体。
 優美な弧を描き、枝分かれを繰り返し、その描き出す形は円。
 そして、その円の内側に描き出される図形。形式としてはゲーティアに記載されているソロモン七十二の魔将を示す納章に近い。

 つまりこれは西洋魔術の召喚術。――に似た魔術だと思う。
 周囲を飛び交う意志を持たない小さな精霊たちが歓喜の輪舞を繰り返し、その周りを術式の補助を行う魔術回路が次々と生成されては集束。更に複雑な魔術回路へと昇華されて行く。
 ……成るほど、これではハルケギニアの貴族たちでなくとも、今の俺とタバサに近付く事はおろか、余計な声を上げる事さえ躊躇われるでしょう。

 そもそも、ハルケギニアの召喚術では使い魔が呼び出される際にその使い魔の行を示す異常事態――例えば、先ほど俺が呼び出された際に発生した猛烈な風や雷は、俺の木行を示す現象の具現化。こう言う現象が起こらない召喚術しか知らない連中。そいつ等の目の前で行き成り後光が差し始める王太子。契約を交わそうとした瞬間に突然、その王太子の左目からの出血。周囲には見た
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