暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
聖夜に祝福を
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フリードとエバーグリーンが言葉に詰まるのも無理はない。何せティアといえば、相手に感情を悟らせないポーカーフェイスがデフォルトなのだ。普段から何かといがみ合うナツや昔馴染みのラクサス、弟のクロスに兄のクロノ、相棒であるヴィーテルシア辺りなら、ほんの僅かの崩れでも解る。けれどこれは、日頃接する機会の少ない彼等でさえ一度見て気づいてしまうほどの、誰が見ても解ってしまうほどの崩れだった。だからフリードはあれが本当にティアなのか断言を避け、エバーグリーンは何を言えばいいのか迷うように濁らせ、ビックスローは軽く困惑さえしてしまう。
一瞬「珍しい事もあるな」と思ったラクサスだったが、思うと同時に足は動いていた。あの、いつだって無表情なアイツがここまで暗い顔をするなんて、余程の事があったのだろう。昔ならともかく、今のラクサスはそんな昔馴染みを見ていながら放っておくほど冷徹ではない。そして声をかけられて冷たくあしらうほど、今のティアは人付き合いを拒絶していないのだ。

「おい、なんて顔してやがる。…大丈夫か?」
「……ああ、アンタね」

声をかけられてしばらく間を置き、それでようやく気付いたとでもいうように顔が向けられる。らしくない。普段の彼女なら、こちらが声をかける前にはもう気配だの足音だの匂いだのを材料に相手が誰だか特定しているだろうに。

「顔色悪いぞ。風邪か?」
「体調は万全よ、というか何?私、そんな不健康そうかしら」
「いや、何つーか…暗い顔してっから」
「はあ?」

口の悪さはいつも通り。だがこれは判断材料としては決め手に欠ける。その気になれば、状態も状況も問わず普段と同じ喋りくらいやってのけるのがティアだ。

「そうよ、私達にだって解るもの!…何かあったなら言いなさい、言ったら楽になるかもしれないでしょ?」
「そうだぜティア!仲間の為ならオレ達雷神衆、一肌脱ぐぜえ?」
「オレ達に出来る事は限られているが、出来る限りの事はしよう。…あまり暗い顔をしていると、クロス達も心配するぞ」
「……クロス、ね」

あのティアの明らかな不調に雷神衆も声をかける。が、フリードの一言でティアの顔がまた更に暗さを帯びた。目を伏せて、やや落ちたトーンで弟の名前を紡ぐ。

(クロスと何かあったのだろうか)
(喧嘩でもしたんじゃないの?……待って撤回。それはないわ)
(あのクロスがティアを怒らせる訳ねえ、逆だってそうだ。なあベイビー)
(逆に関してはクロスがコイツに関してキレねえって意味だけどな)

その態度からして、何かしらであの年中無休シスコンが関わっているのは明らかで。ひそひそと声を限界まで小さくして四人は考えられる限りの想像を働かせる。……とはいえ、この姉弟は仲はいいし弟が姉の様子には目を光らせているはずだから、姉の地雷を
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